ガエル記

散策

「三島由紀夫 死と真実」ヘンリー・スコット=ストークス

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以前は三島由紀夫という作家に強い反感を抱いていたのだけど、今は正直明確に凄く惹かれていることに気づいています。

勿論彼が自決したことを肯定しようとは思わないけど、今の日本の惨状を考えると三島は自決するしかなかっただろうとも思ってしまいます。

その惨状の中で生きていくのが普通の人間なのだと私は思うのですが、三島は普通の人間ではなかった、ということなのでしょう。

まずこの著者ヘンリー・スコット=ストークス氏は何者なのかと思いながらプロローグ「個人的な記憶」を読んでいくと「外人記者クラブで」という小見出しが書かれています。

徳岡隆夫氏の翻訳のせいですが「外国人」ではなく「外人」というのが昭和の風情を感じさせます。

とりあえず、ストークス氏がジャーナリストであることは判りました。結局wikiで確かめるとイギリス出身であり日本人女性を妻としていてなんと息子がタレントのハリー・杉山氏だとの記述がありました。余談ではありますが。

 

このプロローグ「個人的な記憶」を読むとストークス氏が初めて三島に会った時から強い印象を残している様子が伺えます。

三島は日本強く感じさせる作家ですがストークス氏の彼への修飾は「日本人にしてはまったく異例な」「全く非日本人的な人物」という言葉が何度も繰り返されます。それほどとんでもなく面白い人格だったのでしょう。

とはいえ、ストークス氏から見た三島の言動は自決に近かった時期もあるのでしょう、かなり奇妙で滑稽であるようにも感じます。

私兵を持ち、制服を作り、右翼と自称する三島をストークス氏は「お遊び」と感じていますし、私自身そう思っていたのですが、三島は遊び半分でありながらそこにやむにやまれぬものがあったのだろうと今は思います。

トークスに葉巻を勧め、日本刀を見せびらかし、ストークス氏に切腹の真似をさせ、彼の首を落とす振りまで披露し、映画「憂国」「人斬り」に招待し、その時々に大笑いし、また沈鬱な表情を見せる三島氏の目まぐるしさは確かに日本人離れした精神を感じさせます。

死の予行練習を繰り返していた友達を見捨てた私の罪は許すべからざるものである、とストークス氏は断言しています。

それは日本人こそが言うべきセリフでありましたでしょう。

プロローグを読んだだけで強く引き付けられまずはここを記しておきたいと思いこのブログに書きました。

これから読んでいきたいと思います。