ガエル記

散策

『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(百田尚樹・有本香)ナンゾコレ

実は少し前に『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(百田尚樹・有本香共著)という本を読んでいました。買ってはいません。

あの『日本国紀』(百田尚樹著)は読んでいませんが(いつか機会があれば読もうとは思ってはいます。買いたくはありません)何の運命か、ちょうど読むことができたので目を通しました。

 

絶句と言うべき本ですが何と言っても驚いたのは「日本にも悪い歴史があるがそれを学ぶのは後でいい。子供が最初に学ぶのは日本の良い歴史だけを教えて日本人であることに誇りをもつように教育すべき。アメリカはまさにそういう教育をしてきたのでアメリカ人の子供は皆アメリカ人であることに誇りをもっているのである」(概略)というような内容でした。

アメリカでの教育がどのようなものであるかは実際にそこで子供時代から勉強してみないと判らないと思いますが、百田氏がここでいうアメリカ人、というのが日系アメリカ人およびアジア系アメリカ人さらにマイノリティアメリカ人を指してはいないのだろうな、と考えてしまいます。

日本人である著者が何故日系などのアジア系アメリカ人の立場になって考えずコケイジャンの立場になってしたり顔ができるのか不思議でなりません。

誇りが持てるという良い面のアメリカの歴史だけを学ぶならアジア系アメリカ人であれば必ず疑問が生じてくるでしょう。アメリカの歴史上アジア系そして特に日系の人々がどんなに辛い目にあって来たかは無視されて(もちろんアフリカ系アメリカ人は言うに及ばず)輝かしい部分のみを勉強させられる、そんな教育しかなくても日系が誇りを持てるのでしょうか。

 

でも百田氏はこういったアメリカの歴史を考えるうえで、自分のことを「日本人」「アジア人」としてではなく「マジョリティ」としての認識でのみ思考をすり替えることで「素晴らしい!こうあるべきだなあ」と考えてしまえるのだからおめでたい限りです。どうして自分を「日本人」「アジアン」「オリエンタル」ではなく「コケイジャン」に当てはめて考えられるのでしょうか?

 

アメリカは日本とはくらべものにならないほど様々な人種の歴史が絡み合って作られているのに「単純な良い歴史」なんていうものが作られるものでしょうか。すべての人がアメリカ人であるのに?

 

日本もまた複雑な歴史があるのです。しかも長さで言えばアメリカ合衆国よりは長い歴史です。

良いところもあれば悪いところもあってそれは簡単に切り離して考えられるものではないはずです。子供の学習において成長の過程に見合う深さで良きも悪きも説明していくのは当然です。

日本の教育はまだ未熟と思われますが、そうした配慮のある教育ができることを目指すことが誇りを持てる教育なのではないかと考えます。

物事を隠すことは決して良くなることにはならないのです。社会の様々な事件を見ていれば明白です。

 

しかし現在の日本はどうなのでしょうか。

「日本の良いところだけを賛美しよう。悪いところを言う奴は敵だ。つぶしてしまえ」という考え方をする人が目立ってしまい、それを支持する人が大勢いるという現在の日本にこそ誇りが持てません。

 

こうした百田氏の著作そして発言とそれを賛辞する人々たちの話がいつまでも続くのが信じられない現象に思えます。総理大臣までもがそれを支持する今の日本社会。

なんだか長い悪夢を見ているように思えてきます。いったいあの人たちはどこから生じてきたのですか?

私たちは小さなころから「悪いところは直し、良いところは伸ばそう」と教えられてきたはずです。あまりにも正論で当たり前すぎてつまらないほどです。しかし今それが間違いだったという輩が出てきたのです。

 

悪いところを直すためにはそれを認識しなければなりません。それを認めるのは辛いことだけどそれを認め良くしようと努力する人は一番えらいと教えられてきたのにそしてその通りだと思っているのに「そんなことする必要ないw」とせせら笑ってる人たちがいます。不思議でなりません。

以前は「日本人はまだまだだけど、一所懸命頑張ろう」などと言う前向きな発言が多かったのにどうしたのですか?

くじけてしまったのでしょうか?

世界一になどなる必要はないはずです。「世界に冠たる」とか「世界中で四季があるのは日本だけ」とか奇妙な誇りを持つ必要があるのですか?

「まだまだ上がある。がんばろう」って言ってる姿が美しいのではないのでしょうか。

隣にいる人に「ともだちになろう。一緒に歩いていこう」と言える人が偉いのではないですか?

 

以前はそういう国であると思っていたのですが(戦後の)今ではそんな誇りは見失ってしまった人が横行するようになってしまいました。

 

でも私は希望は捨てていません。

そんな本をありがたがってるのは年寄りだけ、若い人たちはそんな偽物を教えようとする本になど惑わされない、と思っています。

若者は隣国と仲良くしようとしているというニュースを見ると救われます。若者から見ればこのような本は老害がおかしなこと言ってるだけの本でしかないんじゃないのでしょうか。(だってこの人の本、ほんとうにおかしいですよ)

 

f:id:gaerial:20190522070819j:plain

貼りつけたくもないけど・・・



気持ちの悪い現在の百田(黒)歴史を早く消してしまいたいです。この歴史こそ誇りなど微塵もないのです。