百田尚樹著「日本国紀」手にすることができまして今読んでいるのですが、噂にたがわぬ講談本であるとここに記しておきます。
「日本国紀」の説明は要らないと思いますが百田尚樹氏による日本通史という形式による日本万歳の美談本だと言って良いと思います。
この書籍の内容がwikiや他の書籍からの転載が多いということは別としてもこのような美談を創作した本が書かれて(様々な手段が講じられたとしても)多くの日本人が喜んで読んでいる(買ってるだけかもしれませんが)ことに苦い笑いを感じてしまうしかありません。
同時に半藤一利著「あの戦争と日本人」を読んでいるのですがそのはじめあたりにこういう一文があります。
「勝って兜の緒を締めよ」という日本人の良い言葉があるのにもかかわらず百田氏はまさしくここで半藤氏が「日本人の悪い癖だ」と嘆く美談本を書いたわけですね。
私はさきに副読本を読みました。そこで「日本人は日本人にとって悪い歴史を子供時代に勉強させられてしまう。これでは自尊心を持てない。アメリカ人はまず自分が誇れる歴史を学ぶ(ケント・ギルバート氏談らしい)日本人も子供時代には日本の良いところだけの歴史を学んで我が国を愛するようにするべき。嫌な部分は大人になってから少しずつ勉強すればいいのだ」ということを話しています。
ここでいう「アメリカ人」は百田氏ご本人と同種族の日系人のことではありますまい。日系であればアメリカの「良い歴史」の中で苦悩を味わったはずです。
つまりは同種族という方向性ではなく「自国におけるマジョリティ」であるイギリス系アメリカ人(つまり白人)と日本国における日本人とを重ねて考えているわけですね。
「自国の良い歴史」がそのまま「誇れる」のは特別な部分に属する人だけだと思いますが、何も考えずに気楽な方だと思えます。
日本人がこれからどのような道を進むのか、私たちはよくよく見つめ、考えなければなりません。
百田氏の本は怖ろしいものですが、これもまた日本人のある側面なのだと認めながら歩んでいかねばなりません。
これを書いたのが年老いた男なのであり、若い人たちはきっと違う道を選んでくれると私は信じたいと思っています。