ガエル記

散策

『飼育』大島渚

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大江健三郎原作小説未読です。

作品概要の

昭和二十年の夏、ある貧しい山村に米軍機が墜落。村人たちの山狩りにより、搭乗者である黒人兵が捕まった。地主の鷹野一正は、黒人兵の足首を鉄の鎖で固定し、村で“飼育”することにした。

というのを見て躊躇してしまったのですが大島渚監督ならば見ごたえのある映画ではあるだろうと思いなおし鑑賞しました。

確かに面白かったです。

その意志で作られていると思われますがこれは単に戦時中だけの出来事としてではなく今現在の日本の姿として重ねられてしまいます。

黒人兵を「クロンボ」と呼び蔑み人間性を認めようとはせず、鎖でつなぐ生活をさせながら「食料を与えて大事に扱った」と言う村人の姿は現在の日本社会のある人々、ネトウヨというような人々が隣国の人に対して見せる態度とまったく同じなのです。

 

何事が起きてもすべて「クロンボのせいだ」と結びつける思考などは同じ過ぎて情けなくなっていきます。

 

一方黒人兵は酷い目にあっても暴力を嫌がり、慕ってくれる子供たちに好意を持ち一人の少年が酷い目にあっている時歌を歌って慰めるような高潔さがあるのです。

 

身勝手な正義感を持ちながら若い女に次々と手を出そうとする本家の主、思い通りにならないと暴力で従わせようとする男たち、不満や反対の意思を持ってもなにもできず男に従うしかない女たち、すべてが腐っているように思えるのも現在の社会と全く変わらないのが悲しく惨めに思えてきます。

 

こんな怖ろしい映画作品を1961年に製作して公開していたということも考えさせられてしまいます。