ガエル記

散策

『一人っ子の国』ナンフー・ワン、ジアリン・チャン

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なぜでしょうか。困りました。

2019年サンダンス映画祭にてグランプリを受賞した衝撃のドキュメンタリー作品なのに「知ってた」内容だったからです。

もちろんそれは単なる「噂」的に知っていただけでこのようにきちっと証言を取っていたわけではないわけです。しかし私はいつどこで「知った」のでしょうか。

私は別に特別な探求をしたわけではありません。

他に人よりは少しだけ中国に興味を持っていたとは思いますが、それでもいつの間にかなんとなくどこかでこうしたことを聞いて?読んで?いました。

ナンフー・ワン監督はまだ中国にいた26歳頃全く何も知らないでいた、と言っていますが、むしろ外部の人間のほうが情報を取れたのかもしれません。

それにしても中国からアメリカに移り住み様々に感覚が変化したとはいえ、このようなドキュメンタリーで自国を追求する姿勢には敬意を表します。

自身が中国で一人っ子政策当時に生まれた女性であるナンフー・ワンが自ら故郷で身近な人々の証言を撮影していく、というというのは壮絶なことではないでしょうか。

 

 

以下ネタバレになります。

 

 

 

証言の内容は自分自身が生まれたばかりの赤ん坊を殺し、捨てられた赤ん坊を見捨て、若い女性に不妊手術をしていく、というものだからです。

ところでどうして男性には不妊手術をしていかないのでしょうか。

もちろん答えは男性優位主義だからです。

それは男だけが家系を継ぐ権利があるために過剰な男子優先と女性蔑視からわかります。これは我が国・日本での天皇家と重なります。

家系、とはなんでしょう。

なぜそんなものを守る必要があるのでしょうか。

家系というものをまったく考えずに育った者としてはそのためには女児を殺すのが当然、という仕組みを理解することは困難です。

 

そしてその結果=一人っ子政策で女児を殺しては男児だけを生き残らせた結果、男性の数が異常なほど増えて結婚出産ができないと聞きます。

つまりは家系が絶えてしまうわけで、男児のみが家系を継げるといってもせいぜい一代・2代ほどの存続にすぎないということになってしまうのではないでしょうか。

もちろん、これから科学が進めば人工授精による家系存続も可能になってくるわけで従って中国人男性は増え続けていくのでしょうか。

 

ちょっと先走りすぎました。

 

冒頭で「私は知っていた」などと書くのは「知ったかぶり」のようですが、少なくとも日本では教科書にも「中国は一人っ子政策をしている」ことは書かれていたはずで誰もがそのことは知っていたはずなのです。

そしてドキュメンタリーの内容は、国策でそのような政策があれば結果どういう事が起きるかということは少し考えれば誰も思いつくようなことそのものなのですよね。

しかし他国で起きていることの批判をするのは容易くても自国での政策を批判するのは難しいのです。

そしてそれを是正していくのはもっと難しい。

日本は今少子化を嘆いていてそれを解決しなければ、とは言ってはいますが根本的に問題を解決しようとはしていない。

今現在の日本の状況で若者たちの結婚や出産率を上げたいのなら意識の改革も経済の改革も絶対に必要です。

福祉を充実し教育を無料化するなど当たり前のようなことを言わなくてはなりません。

中国は「やりすぎ」てしまったのですが、日本は「やらなさすぎ」てしまうのでしょう。

しかし中国は今一人っ子政策をやめ新しい道に入ったわけですが、日本には新しい道に入る現実はあるのでしょうか。

 

このドキュメンタリーを観て「中国は・・・」とだけ言っていてもしょうがないのです。