初代だけでなくガンダムシリーズで言えるのは女性の描き方が日本の他のアニメ作品とは全く違うという事です。
今でもどうかと思うことはありますが、あの当時日常ものでもそうですし特に戦争を扱った作品の中では設定が未来であっても戦闘員・乗組員が男性ばかりであり女性は「色を添える」という表現で医療班だとかに位置づけられることが決まりのようなものでした。
ガンダムでは最初からそうした設定が大きく異なっていました。
ホワイトベースでの従来の乗組員は男性ばかりのようですが年若いブライトがリーダーとなって動かすことになってからはミライ・セィラという二人の女性がすんなりと活躍します。
「すんなり」と書いたのはそれまでの他作品ではこういう場面になると「女に船が動かせるか」というような男女性差の悶着が必ず入り込むのが当然のように誰もがそれを認めたからです。
特にミライはライセンスをもっているために操舵を任されるわけですが、「女性が操縦士となる」という重要な配置につくことはなかったのではないかと思います。
例えば「宇宙戦艦ヤマト」(旧)で一人だけの女性乗組員・森雪がレーダーと医療の手伝いを掛け持ちし何のことなのか生活班長でもあるという設定になっていたりするのはあの規模の戦艦の中で女性に対し過剰な責任ではないかと思うことを平気でやらせたりするわけですが、これは逆にいえば簡単な仕事をあれこれさせられる日本女性のよくある姿に重なります。
これは「ヤマト」だけのことではなく多くのアニメ作品で同じような状況だったと記憶します。
そしてガンダムで忘れられない衝撃だったのはやはりマチルダさんの登場でした。マチルダさんとの話は短いものですがアムロがニュータイプであるという特別な存在であることを彼女が見抜いたことも伝説となります。そして主人公のアムロ少年に初めて「恋」という感情を抱かせた女性として表れたのが彼女でした。
ガンダムは様々な女性が登場します。
まずは少年マンガによくいる世話女房型の少女・フラウ・ボゥ。美少女ではないですが、明るく可愛い感じでアムロの身の周りの世話をおせっかいなほど焼いてくれるわけです。アムロ自身は嫌いではないけどめんどくさいなと思ってる感じ。
アムロにとってミライさんはちょっと別のカテゴリにいる感じだし、セィラさんは(後ではなにかとあるようですが)出会った時はお高くて怖い感じのようです。
そこへ登場するマチルダ中尉は軍服にベリーショートの髪形できりりとした感じなのですが、どういうわけか他のどの女性よりもアムロ君の恋心を目覚めさせてしまうわけです。
それは軍部に反発していたアムロが次第にガンダムの操縦ができる自分の能力に気づき戦うことを認識しはじめたことにマチルダ中尉の姿と誉め言葉が相乗効果を生み出してしまったということでしょうか。
少年の初恋の人が軍服姿というのもこれまでにないことでありました。
もう一人、アムロと同じニュータイプの女性としてララァがいます。彼女の存在もまた特別なものでした。
ララァはよくアムロの恋愛の関係としてテレビで紹介されてしまったりしますが、観ていればララァとアムロが恋愛関係ではないことは確かです。
「同じ魂を持って惹かれ合う」のが異性であればすぐに恋愛関係としてしまうのが通常ですが、ガンダムではそれは同じ「仲間」なのであって恋人なのではないのです。
したがって「ガンダム」では幾人もの女性がアムロと関係してきますがこの中で恋愛関係だ、という描写はされなかったわけですね。
ここでも登場させて申し訳ないですが「ヤマト」で当たり前のように恋人認定された古代進と森雪との大きな違いがあると思います。
ガンダムで恋人だったのはガルマとイセリナであり、ランバ・ラルとハモンさん、そしてミライさんはモテモテという次第です。
これまで主人公に当然のように添えられた恋人役、のような女性がいないということでもガンダムは他にない作品でした。