NHK「100分de名著」今回はドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」大変おもしろい内容でした。
非常に難解な長編小説、という紹介をされることが多い本書で確かにそうなのでしょうが、私はきわめてミーハー的読者としてこんなにぐいぐい読める面白い小説は他にないでしょう、という大ファンであります。
とにかく魅力的な人物が数多く登場します。
私はこれも単純に主人公のアレクセイが大好きで次作小説&マンガの主人公にアレクスと名付けたのも彼の名前からとったものでした。ロシア風味ではなかったので英語表現になってしまいましたが。
イワンのようなニヒリスティックな男にはより強い魅力を感じますがこの物語の主人公はやはり純真でだれからも好かれてしまうアレクセイのような男でなくてはならないのでしょう。
無垢と言ってもいいアレクセイの精神にとても惹かれました。
物語の多くはこのアレクセイとの会話によって成り立っていっていると思えます。
カラマーゾフ家は個性的な4人の男によって成り立つ家族です。吝嗇で女色狂いの父親フョードル、優柔不断なドミートリ―、無神論者のイワン、逆に僧院で学んでいた純真なアレクセイ。
下品な傍若無人であり他の二人の息子には素っ気ない父親も末っ子のアレクセイだけは可愛く思っているのですが、それは無論彼が無欲で優しい心根の持ち主だからです。
次男のイワンも無神論者でニヒリスティックな目を持っていますが弟アレクセイに一目置いている節が見えます。
イワンが思いのたけをアレクセイにぶちまけ虐待を受ける子供たちのことを話す部分は読んでいてぞっとするものでした。
番組でもこの部分の詳しい内容は言われていません。
それはイラスト担当の配慮にもあったようです。
またアレクセイが目撃したカテリーナとグルーシェニカの「手にキスをする」対決シーンも見ものでありました。
いじめられっ子イリューシャがアレクセイの手に噛みつき固い意地を見せる場面、そして未来のアレクセイと共に活躍することになる利口なコーリャ少年との会話、さらにアレクセイが子供たちにホットケーキを食べに行きましょうと語りかけるラストシーンは何度も読み返しました。
本書は優柔不断の青年ドミートリ―の葛藤の小説なのですが、私はそれよりもアレクセイを描いた箇所に浸りきっていたようです。
アレクセイが「カナの婚礼」を一番好きな場面と語るエピソードなどが私には印象的でした。
番組ではアレクセイと車椅子の少女リーズを描く部分がなかったのは少しだけ残念ですが長編を短い時間で分析していかねばならないのでこれは仕方ないですね。
逆に他を削ってここを紹介するほどではありませんから。
素晴らしい小説ながらあまり映像化はされていない(といっても番組内でロシア製の映像が流れてはいましたが)のですがこの小説はもう小説で読むだけでもいいのかもしれません。
でなければテレビアニメで作られないかとは思います。映画では時間が短すぎるでしょう。