ひたすらナミ役の梶芽衣子が美しくかっこいい映画です。
この作品、今作ることになったらどうなってどう評価されるのだろうと思ってしまいます。
女性の性を徹底的にいたぶり見世物にしている映像であるには違いないのですがそれと同時に女性を賛美し敬意を持っている作品でもあります。
と言っても現在のフェミ思考としてはそうした女性賛美自体が差別意識ともいえるわけです。女性を蔑むのも過剰に賛美するのも差別意識だからです。
例えば『スターウォーズ フォースの覚醒』からの三部作に登場するレイはナミと同じような暴力的活躍(?)を見せるわけですが性的描写はまったくといっていいほど在りません。(といっても私はまだ最後の作品は観ていませんが)
ナミが幾度も衣服を脱がせられるのに対しレイはちらりともそうした場面はない(ディズニーですからとは言えますが)だけでなく、ナミの長い黒髪が美しくセクシュアルに乱れるのに対しレイは髪の毛をきっちりと微動だにしないほど縊り上げていることにも表れていると思えます。
現在の判断で本作がどのように受け止められるかは際どいところだとは思いますが、それでも映画作りに細やかな配慮がなされているのが伝わってくるのです。
この作品が見せたいものはリアリティではなく梶芽衣子が演じるナミという女性の気高い美しさなのでしょう。
そのために演出はリアルではなくあえて芝居的なものとなっているのでしょう。
ナミに暴力をふるう男たちの動作も彼女の美しさを見せるためのもので彼女が傷つかないように配慮しながら掴み殴る演技をしていることが目に見えてわかります。
熱いスープを体にかける、という場面でもそもそも熱くなさそうですしかなり気を付けてかけている様子です。
ナミと元恋人とのセックス、その男から裏切られる場面なども演劇的な演出になっていてちょっとファスビンダーの『ケレル』を思い出す感じですが『ケレル』のほうがずっと後の作品ですね。
すべての暴力が手加減され、炎を手前にして悪女を炙る、などというような工夫だとか追っての犬を撲るという行為もフリだけで犬が横たわっているとかすべてにおいて優しさにあふれた作品となっています。
それにこの作品に出てくる男というのが全員クズなのがむしろ潔いです。良い男だっているよ、という言い逃れがないのですね。
今でも続く日本社会での女性差別をそのまま映画にしているとも言えます。
一度は男に騙されてしまったナミが二度と男に屈せず立ち向かい復讐を遂げる物語なのです。
タランティーノが惚れ込むはずですね。