ガエル記

散策

『トータル・リコール2012』レン・ワイズマン

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こちらもアマプラにあったので観ていますが、始まった途端惹きつけられたバンホーベン版と違って旨味が全部抜け出てしまったカツブシの如くで完全に流し見です。

前作はとても目が離せない凄さがあったのですが。

 

思うにユーモアというのは大変な持ち味でありなかなか醸し出せるものではないのですね。

バンホーベン『トータル・リコール』はアーノルド起用も手伝ってなんとも言えないユーモアがありました。アクションの一つ一つに笑いがあるのは凄いことです。しかもかなりの時間が経ったうえでも。

本作はそうした持ち味・面白みがなくなり、だからといって暗く重いテイストには足りない。コリン・ファレルは嫌いではありませんが、このリメイクに使うには適していなかったのではないでしょうか。

そして二人の美女がバンホーベン版はこれも戯画的に北方金髪と南方黒髪で判りやすかったのにとりあえずブロンドっぽいのとブルネットぽいので区別しているみたいですがぱっと見では判別できない色合いだし、顔もスタイルも似ていて面白くないのです。現在なら白人と黒人くらいに設定してもよかったのではないでしょうかね。

もしくは男が白人なのだから女性はアジア系とヒスパニック系、黒人系アラブ系とかいろいろできるはずです。

愉快なタクシー運転手は残して欲しかったな。

 

プロットは原作に忠実になったということらしいですが、面白さが減じてしまってはどうでもいいのではないのでしょうか。

火星ではなくしたせいなのか、バンホーベン版に登場する放射能で変形したと思われる人々は出てこないのに三つの乳房の女性だけは出てくるし、妙なアジアテイストの意味もよくわかりません。

 

 肝心のSF的アイディアは本作ではすべてのセンス・オブ・ワンダーが失われてしまいました。

未来SFなのによく見たものばかり、と感じてしまうのは独自のひらめきがないからなのです。

本作を観るとバンホーベン『トータル・リコール』がいかにとんでもない面白さに満ちていたかが判ります。

 

つまりどれもこれもぬるい設定仕上がりになってしまったのが『トータル・リコール2012』なのです。

SFというものは驚きの中にあるのです。それはバンホーベン『トータル・リコール』にありました。