ガエル記

散策

『ミンボーの女』伊丹十三

f:id:gaerial:20200221062937j:plain

これは最高に面白かったです!!!

昨日『マルサの女』を見て確かに面白いのだけど性差別表現があまりに酷く感じられて伊丹監督でもこれじゃあなあ、という声を上げたのが聞こえて対処されたかのようにwその5年後に作られた本作はそうした性差別意識など感じさせない上で面白さは各段に増しているように思えました。

 

ネタバレします。ご注意を。

 

 

 

『マルサ』では設定・構成がややわかりにくく感じていたのですが、本作になるとすべてがすっきり明確になり『マルサ』では難しく飲み込めきれない説明が今回はなにもかもきちんと整理されて提示されています。

しかも『マルサ』ではラストが意味ありげ的に終わって渋い後味だったのが、本作はからっとさわやかに大解決という素晴らしさでした。

 

何と言っても感心するのは正義の味方ー民事介入暴力専門の弁護士であるヒロイン井上まひるがすべてを解決してしまうという筋書きではなく彼女に感銘したふたりの凸凹コンビが暴力団に立ち向かっていく、という構成になっているところですね。

(これが『シン・ゴジラ』にはないと思っていて不満なのですよ私は)

デカい声で脅してくる卑劣な奴らに法律をもとに立ち向かっていく弱き人々の戦いを応援し、最後の勝利にはスタンディングオベーションでありました。

 

マルサの女』での宮本信子もよかったですが、本作はさらに魅力的だったと思います。もしかしたら観るごとにそう思うのかもしれませんが。

そして同じく『マルサ』の脇役で一躍有名になった和製ジャック・ニコルソン(当時そう呼ばれていました)大地康雄氏は本作では実質主人公と言ってもいいのじゃないかの大活躍です。こういうキャラが主軸になっている映画を観るとこの役にうすっぺらい若手イケメン俳優を当ててしまうから今の日本映画はつまらなくなるのだよな、と思ってしまいます。

イケメン俳優が悪い、のではなくこの役にイケメン俳優を当てなきゃ売れないよ、と考える作り手のセンスが悪いんですね。

その相棒的存在を演じるのが村田雄浩。体は大きいのだけど気が弱くて心優しい彼が「僕のせいでまひるさんが犠牲になってしまった」と号泣する場面は泣けます。

気の強い女性ミンボー弁護士と気の弱い凸凹コンビがやたらと怒鳴りつけてくるヤクザたちと真っ向勝負していく。家族だとか恋人だとかの余計な尾ひれは付けずシンプルな脚本になっているのも面白さの表れです。

 

日本映画の低迷が嘆かれてもうかなり経過しておりますが、まずは伊丹十三映画、とりわけこの『ミンボーの女』を観てどうして面白いかの勉強をした方がいいのではないでしょうか。

『マルサ』と比較して性描写を失くしたほうがより良い映画になることを確認するのも良いと思います。

 

実は『マルサの女』を見て伊丹十三の他の映画はもういいかな、と思ってしまったのですが本作を観てさらに別作品も絶対観るべきだな、と思い直しました。

悲しいことに伊丹監督映画はずっと以前に作られたものも含めると11本しかありません。

『お葬式』はもう観ていますので(これも性表現が苦手です)以前の分は観れるかどうか判らないので外すとしたら後7本、観ていこうと改めて思います。