「腹かっさばく」という言葉が夥しく使われます。
恐ろしくも悲しい物語でした。
『切腹』=せっぷく、なんて言葉は今ではなんだか笑いのタネにしかならない響きです。そのような言葉をタイトルに選んだ映画というのはとんだトンチンカンな内容なのかと思っていたのですが、本作は現在の我々の社会を髣髴とさせるかの皮肉で出来上がっていました。
wikiにも
武家社会の虚飾と武士道の残酷性などの要素をふんだんに取り入れ、かつて日本人が尊重していたサムライ精神へのアンチテーゼがこめられた作品である。
とあります。
三島由紀夫が感銘を受けたということですが、私はそれとは逆の方向で感心しているのでありましょう。
結局は主人公の生き方に疑問を感じてしまいます。
もちろん同じように「立派な武士精神」を持った娘婿にも。
この映画に登場するすべての武士たちがなんとも愚かで悲しいのです。
昨日観た『八月の狂詩曲』の鉦お祖母ちゃんの爪の垢でも煎じて飲むがいい、ということですね。
そういう悲しい者たちを描き上げた素晴らしい映画です。