これはもう何度も観ている映画なのですが底抜けに面白い作品ですね。
緒形拳の魅力が凄まじいです。
初めて観た時はとにかくふっきれたコメディとして楽しみました。
今となっては娘のお栄もとんでもない絵師だったと知ってしまったので、本作のお栄がただぶらぶらとして父の面倒を見る娘、として描かれているのは残念なのですが、そこらは切り捨ててしまったのが新藤兼人監督の好みとかセンスとか洗濯だとか、そういうことなのです。
『北斎漫画』というタイトルどおり、というのか演出がきわめてマンガチックでありますね。カブいているといいますか、そういうのも好き不好きでしょうけど、私はかなり好きなのです。
樋口可南子のおナオの奔放さ、田中裕子のお栄のとぼけた感じもよかったです。
おナオが女の性そのもののように妖艶なのに対し、お栄は女性性を感じさせないのです。
曲亭馬琴に扮した西田敏行。私は何故だか西田敏行氏に縁がなくてほとんど彼の出演作を観ていない、という不思議があります。
有名な俳優なのに何故なのでしょうか。
もちろん、テレビで姿を観てはいるのですが、「ものすごい演技派俳優だ」と言われるのに特に映画では観たことがないようです。
なのでこの映画は私にとっては西田敏行を観られた数少ない作品になるのです。
なんだろうなあ、このぎらぎらした男臭さの魅力は。
ところでもう少し時間が経てば今の話題の人物もこのような戯画化された映画などになってしまうわけです。
手塚治虫氏はもうなんども作品になっていますしね。