ガエル記

散策

『天井桟敷の人々』マルセル・カルネ

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U-NEXTにて鑑賞。『如懿伝』が途中から課金ということであきらめざるを得なくなってショックでしたがなかなか観ることができない『天井桟敷』があったのであきらめることができました。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

何度か目の鑑賞ですが、焼き付くような印象を残す映画です。特に主人公のバチストの白いぶかぶかの衣装でのパントマイムは初めて観た時の衝撃は忘れられません。

今観なおしてもその感動は色あせてはいませんでした。

バチストのイメージが75年も前のものだというのが不思議です。非常に新しいものに思えるのです。

 

そしてガランスの美しさ気高さに打たれます。

バチストは同じ劇団にいる可憐な娘ナタリーから強く慕われ求められていますが突如現れた自由に生きる女性ガランスに魂を奪われてしまうような恋をしてしまいます。

 

ナタリーは安定した幸福、ガランスは自由と芸術を意味しているのだと思います。バチストがナタリーからどんなに乞われても彼女を愛していると言えず、ガランスを求めてしまうさまは単純に男女関係を示しているのではなく芸術を愛する人間の心理なのでしょう。

 

ガランスが単純に若い美しさではなく謎を秘めているのは彼女が芸術を表しているからでしょう。若いバチストは彼女に恋焦がれますが彼女は彼のあまりの激しい愛から逃れてしまいます。

パントマイムで名を挙げたバチストと彼女は再開しふたりは互いの愛を認め合い始めて結ばれます。

しかしナタリーの家庭的な愛の要求を聞いてガランスは再び去ってしまうのです。バチストを繋ぎとめようとするナタリーですが、芸術を求める者には安定した幸福だけで満足することはできないのですね。

 

 

ところでバチストはなぜああも古着屋を嫌うのでしょうか。確かに嫌な感じですが面白くもあります。でも現実目の前にいたら私も逃げ出すかもです。

ガランスを天使と呼ぶこれも謎の男、ガランスはフランソワと呼びますがピエール・ラスネールという実在の犯罪者です。

ガランスは彼とも仲良く、シェイクスピア劇を演じるフレデリックとは同棲もしますが、金持ちの伯爵からは求愛されても愛情はうわべだけなのです。

すべて芸術を意味しているのです。

 

 

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