ガエル記

散策

『リトル・ブッダ』ベルナルド・ベルトリッチ

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チベット高僧の生まれ変わりを探す物語です。

候補として3人の子供が選ばれるのですがその一人がアメリカシアトルに住む白人の少年ジェシーでした。

 

ネタバレになります。ご注意を。

 

詳細を語る知識はありませんが、長い歴史の末、中国政府の支配を逃れるため1950年代からチベット仏教の最高権威であるダライ・ラマはインドへ亡命しそれに続いて多くのチベット人や高僧も亡命して新しいチベット仏教組織を作って活動しています。

ダライ・ラマは代々亡くなると輪廻転生した少年がどこかにいると信じられて探し出されるという話は有名でしょう。生前のダライ・ラマが愛用していたものをその子供が偽物といっしょに並べられた中から選ぶことで証明されると聞きます。

 

しかし本作でダライ・ラマだけでなく他の高僧も同じように探されていることを知りました。

この物語を見ていると『スターウォーズ』の師弟関係と重ねて思い出されはしないでしょうか。

デヴィッド・リンチのTVドラマ『ツイン・ピークス』もチベット仏教の影響を色濃く受けたものですが西洋諸国の知識人にチベット仏教の印象は強かったのだと思えます。

 

それにしてもチベット高僧の生まれ変わりがアメリカシアトルにいた、という設定は荒唐無稽というよりも西洋人の身勝手のように考えてしまう方もいるかもしれません。私も最初は「ははあ、共感しやすいようにアメリカ白人を絡めてきたのだな」と思っていたのですが高僧の生まれ変わり候補が3人いて、実は3人とも本物の生まれ変わりだった、と知らされた時はっとしてしまいました。

 

もう一人はインドの少年、そしてもう一人は少女なのです。

チベット高僧の輪廻転生がインドの少年だけでなく少女(女性)でもあり、遥かアメリカに住む白人の少年でもあった、一つの魂が三つに分かれたのだ、という表現はすばらしいことではないでしょうか。

 

チベットの男性高僧は女性にもなり異人種にもなったのです。

 

本作は少年ジェシーの物語と共にブッダの物語が絡んでいきます。

若き王子であるシッダールタがブッダとなっていく過程です。

彼を演じるのが当時29歳のキアヌー・リーブスです。ほっそりとした体とあどけない表情の若者で見惚れてしまう美しさでした。