ついに読みました。安冨歩教授著作です。
実をいうとこの本を読んで感じたのは「まさかあの『星の王子様』がモラルハラスメントの本だったなんて」というのではなくて「ああやっぱり。ずっと嫌な感じがしていたのはこういうことだったのか」というものでした。
『星の王子様』は日本でも非常に人気の高い本です。私も子供の頃から知っていましたし、実際に手に取って読んだのですがどういうものか奇妙な反感を覚えてお気に入りの中に入れることはできませんでした。
その後も何度も繰り返し本を読む機会はあったのですが「大人になったら理解できたよ」ということもなく(この理解の仕方は他では何度となくあるものです。例えば映画『サウンド・オブ・ミュージック』が子供の頃は馬鹿々々しくて嫌いでしたが、大人になって「馬鹿々々しいどころか素晴らしいものだとやっと判った」のでした)やはり何度読んでも嫌な感じがあったのでした。
特に安冨氏が指摘している薔薇の態度は私には納得できるものを感じられなかったものです。
そして私はそれ以上深く考えないままで終わっていたのをこうして分析してもらって凄く納得できたということでした。
私にとっては受け入れやすい分析でしたが美しい感動を与えてくれた作品を否定されたように感じる方は多いかもしれませんが、なぜ自分がこの物語を良いと思ったのか、を考えてみるのもまた興味深いことになるのかもしれません。
考えてみれば作者自身であるはずの主人公=飛行機乗りが出会う相手が「王子様」であって「王女様」ではないのです。
もしこれが異性の「王女様」であれば作者と恋に落ち、結婚しました、というような物語になりそうですが出会ったのが同性の「王子様」である、ということは
「星の王子様」は作者自身である
ことに違いありません。
作者自身が心に秘めていたものを
「星の王子様」と言う姿に変えることでやっと表現できたのかもしれません。
私と違って安冨歩氏は『星の王子様』を好きだったようです。好きだった上でこの解釈をされているのですが、なぜ好きだったのかは作者がこの物語の中できっちりと決着をつけることになっていたからではないでしょうか。
もしかしたら他の「星の王子様が好きな人」たちもこの物語でモラルハラスメントを受けて傷ついた心を癒されているのかもしれません。
ではなぜ私はもともとこの物語が嫌いだったのか。
これもまたよく考えてみなければなりませんね。