『鬼滅の刃』の人気が続いています。私はアニメの最初を観てその後もちらちらと観てはみたのですがどうやら好みではないようだと思ってあきらめています。
それでも最初に観てみたのはこの作品の設定を聞いて「大正時代を舞台にした右翼オカルト」かーと凄く興味を持ったからでした。
実は私は明治大正昭和前期の右翼オカルトものに物凄く興味があるのでした。
ツイッターではよく「わたしは右でも左でもない普通の日本人です」と名乗るネトウヨがうようよしていますが「わたしは右でも左でもある異様な日本人」と名乗るべきでしょうか。
まあ実際はそういう人も多くいるとは思いますが、(私が大嫌いな)宮崎駿氏も右でも左でもあるではありませんか。
とはいえこの「右翼オカルト」はうようよと存在するものの公式にはあまり大声で言えないカテゴリではありました。
軍隊とオカルティズムを組み合わせた設定は少年漫画ではあまり本格的に扱われてはいないのではないでしょうか。特に敗戦後は「戦争を否定する」ことが教育の主軸となっていましたので少年マンガでそうしたものを面白がるのは避けられていたと思えます。
私自身戦争は否定しますが怖いもの見たさの気持ちは次第に大きく成長してしまったように感じています。
近年日本人の好みは極端に右翼化してきました。SNSでのやりとりがその風潮を過激化させたようにも思います。
残念なのはネトウヨと称される人々が「日本を愛し日本人であることに誇りをもっています」と繰り返すわりに日本文学の知識がまったく感じられず漢字も読めないし(漢字だからか?ひらがなだけなのか?)こうした右翼とオカルトを論じ合えるようなセンスが皆無に思えることです。右翼と名乗るならばせめて三島由紀夫は読んでいてほしいものです。その三島由紀夫氏もやはりオカルティズムというか非常にムー的な人でもあったようですね。あの美文学の傍らUFO、宇宙人にも興味をもっていてやはり右翼とオカルティズムというのは切り離せない感覚なのです。
さてそうして日本は先の大戦後、三島の割腹を横目にしながら右翼を否定し続けてきましたがじわじわと変化しながらも右翼化してきたのかもしれません。
近年宮沢賢治が愛されているのもその傾向を感じさせます。
(宮沢賢治も好きなのでやはり自分右かな)
そんな中『鬼滅の刃』の大流行は決定的な答えに思えます。炭治郎の耳飾りが旭日旗を模したものであるのは右翼として当然のものであってそれを何らかの理由付けをしたとしても否定されるものではないのです。しかも本当に太陽を意味しているということなのですから否定できるわけがありません。
とにかく右翼オカルトものに強い興味がある私としては初めて少年マンガでそのカテゴリを打ち出した作品が出されたと知って期待してアニメを観たのですが(マンガも少しだけ)あまりにも絵柄が子供っぽいのとおふざけ場面も稚拙なのに失望してしまいました。やはり右翼オカルトを題材にするという危険な設定はこの子供っぽさで中和しないと無理だったのです。しかしそれでは私は満足できませんでした。
では右翼オカルトを描いたマンガ作品で気に入ったものは何かと問われればそれは迷いもなく柴田亜美著『カミヨミ』と答えるでしょう。
『カミヨミ』は私が望むとおりの軍事とオカルティズムを融合させた最高傑作だと思っています。
私としてはこちらをアニメ化してほしいとずっと願っているのですがさすがに無理なのかもしれません。
時は明治。日本帝国陸軍大佐である女傑・日明蘭とその息子天馬。「カミヨミ」である菊理姫と双子の兄・帝月。
主人公たちがそのまま軍隊と霊能力者であります。彼らはその能力を駆使しながら悪霊たちと戦い滅していくという物語なのですから明治と大正という違いはあっても『鬼滅の刃』が『カミヨミ』を意識していないとは思えません。
『カミヨミ』の主人公たちは『鬼滅の刃』と同じ年齢ほどの少年たちでありふんだんにおふざけを盛り込みながらもこちらはまったく子供っぽくないのが私には魅力でした。
絵柄といいギャグのセンスといい物語の迫力といい『カミヨミ』は『鬼滅の刃』と比較すべくもないのですが、あまりにも軍隊とオカルトの徹底が一般に普及するには難しかったとしか言えません。
正直、『カミヨミ』が一般に大流行するのはちょっと恐ろしいです。
しかしそれなら『鬼滅の刃』が一般に受け入れられ大流行してしまっているのも恐ろしいことにも思われます。
ちょいとずれますが『鬼滅の刃』は様々なマンガを取り入れて描かれているのを感じます。先日『進撃の巨人』が諸星大二郎マンガの影響を受けていると書きましたが『鬼滅の刃』は観ていると『進撃の巨人』の設定そのままですね。
最初に母親が殺されるところキャラ設定、主題歌が「紅蓮の弓矢」「紅蓮華」とどちらも「紅蓮」なのはちょっと痛々しい気がします。
しかし『進撃の巨人』はそこまで軍隊とオカルトを感じないのですよね。むしろ『鋼の錬金術師』には色濃く軍隊とオカルトがあると思います。
こうしてみるとなぜか「軍隊とオカルト」をマンガにしている漫画家は女性に多いのです。
私も女性ですから奇妙な連帯を感じます。
女性のほうが「軍隊とオカルト」が深く結びついていることに惹きつけられるのでしょうか。
『鋼の錬金術師』が『鬼滅の刃』と似ているかどうかは・・・こちらは弟を助けようとしている、ということですかね?
右翼とオカルト。軍事はなぜかオカルティズムと深く結びつきます。
霊媒、毒薬、怨霊、UFO、宇宙人、超能力、魔術、錬金術、数秘学、占星術、新興宗教、予言、似非科学、古代文明、超心理学。
リアリストであるべき軍事がどうしてこのような不安定なものと関係してくるのでしょうか。
そういえば素晴らしいマンガ家である水木しげる氏の作品はそのまま「軍隊もの」と「オカルト」でそのふたつはしばしば混じりあっています。
私自身、戦争はあってはならないと望んでいます。その反面右翼心理とオカルトという組み合わせに強い興味があるのです。