ガエル記

散策

『ハウスメイド』イム・サンス

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『パラサイト』の元ネタとなったという『下女』(名作と言われている)のリメイク作品だそうです。

なんか複雑な紹介ですが、充分この映画の冒頭(のちょっと後)を観ても『パラサイト』を思い出しました。

つまりとんでもない富裕の家に住み込みの家政婦がいるところへ新しいメイドが入ってくることとその貧富の差を描いた作品であることですね。

 

 

以下ネタバレですのでご注意を。(一緒に『パラサイト』のネタバレもします)

 

 

 

 

『パラサイト』は金持ち一家でも良い人たちだったので楽しい映画だったのですが本作は嫌な金持ちと善良な貧乏人の対比になっています。

そのうえヒロインが家の主人とできてしまい(レイプではなくて関係ができてしまう、という感じですが)妊娠してしまうと定石通り人生が破綻していく、という筋書きになっていきます。

もちろん悲惨な設定なのに変わりはありませんが、奇妙なおかしさも漂っていて不思議な味わいがあるのです。

他の方のレビューを見ると「よくある嫌な話」とだけ書かれているのが散見されますがそれだけではないと私は感じました。

 

それはヒロインのウニが貧しく何の頼りもない身の上ではあるけれど高い自尊心を持っているからです。

彼女は結局富裕層に対してまっとうに反撃できることはできませんが彼らの目の前で首をつりさらに焼身自殺をする、という復讐で恨みを晴らします。

富裕家族の中でただ一人まともな感性を持っている幼い少女ナミは好意をもっていたウニの焼けていく姿をじっと見ています。

生まれた時から贅沢に暮らしながらナミのような感性に育っていくことができるのでしょうか。彼女は行く末立派な政治家になってしまう運命なのでしょうか。

 

『パラサイト』でいちばんまっとうな妹が死んでしまう、という結末が謎だったのですがそれはネタ元で(『下女』がこれと同じならば)ヒロインが死んでしまうことへのいわばリスペクトだったのかもしれません。

『パラサイト』は金持ちでも善良だった、と書きましたが結局は貧乏人の自尊心を傷つけることで恨みを買い本作以上にきっちりと復讐されてしまうわけです。

 

しかし映画と関係ないですがここまで贅沢に暮らすのは無駄な気がします。とはいえそれは私が貧乏だからそう思うだけでもともと贅沢に生きてきたらこれが当たり前なのでしょうが。

そしてこれは『下女』のリメイクということですがさらなるリメイクは『ハウスメイド』がロボットになるっていうことでしょうか。

ロボットなら復讐はされずにすめばいいのですが。