ガエル記

散策

『鬼はさまよう』ソン・ヨンホ

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昨日の『殺人者の記憶法』の上質なディナーと違ってこちらはいかにもな韓国郷土料理の風味でした。美味くて飯が進むのですが強烈に辛い、というやつです。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

 

 

残酷な殺人、執念の復讐、深く強い人情、熱い夫婦愛、鍛え抜かれた男性の肉体、悪い奴は絶対に許さない信念が強烈に描かれていきます。

特にガンチョン(パク・ソンウン)の暴力演技は韓国俳優の独壇場ともいうべき凄まじさで迫ってきます。幼少期に観たらトラウマになってしまいそうです。

この鬼がさまようのを誰かが止めなければならないという義弟の意志を受け取った義兄がついにそのとどめを刺す、という結末のためにどれほどの犠牲があったのか、が描かれていくわけです。

とはいえやはりこの映画は壮絶な鬼の所業、人間離れした肉体の強さを描きたいがために作られたのには違いなくしつこいですがそこにも『キリング・ストーキング』のオ・サンウの存在を感じてしまいます。

犠牲者となった女性たちが受けたであろう残酷な場面は他の映画ではエロチックシーンとして見せ場になったはずですがこの映画作品ではその目的は果たされていません。

主人公刑事の(犠牲者のひとりである)妹が妊娠していたという説明で惨たらしさと悲しさを加える演出はありますが映像としてはほぼ男同士の殺し合いに割かれています。

 

ということであればもともとこの鬼が男ばかりを狙って殺す、という設定のほうが納得できるようにも思えます。単純に鬼が気づいていなかったのかもしれません。

刑務所のシャワー室での殺人で目覚めたようにも感じます。

その点ちょっと残念な気もします。