ガエル記

散策

『道成寺』川本喜八郎


【道成寺】動畫(川本喜八郎1976年作品)

ツイッターでこの動画の存在を知りました。

というか実をいうと『道成寺』の名は知っていても物語がどういうものなのかをよくは知らなかったという始末です。

安珍清姫』でも知られている『道成寺』ですがこの動画を教えてもらって初めて内容を辿った私でした。

 

(なんか鐘の下に若い男が隠れていてきれいなお姫様がその鐘の上に乗っかっているという歌舞伎の一場面としか覚えていませんでしたのです)

 

ツイッターで教えてくれた方は「必ず戻ってきます」と嘘をつかれた清姫が恋した案珍を探し求めて走っていく場面を切り取って「殺意を感じる場面」と題されていました。

 

美しくしとやかな姫が裾を乱して走り続けていきます。心にはただ約束を交わした愛しい男性・安珍を探し出す執念のみが存在するのです。

履いていた草履も脱げてしまい人形の白い素足に血がにじむのです。

ついに安珍を見つけた清姫は(人形なのにもかかわらず)ハアハアと大きな息をつぐのです。安珍を見つめる清姫の視線に引き寄せられます。

恐ろしい美しさに見入りました。

 

たまらず全編を知りたくてこの動画を見つけました。

 

安珍清姫が一目見てはっとする美しい僧侶でした。

老僧ののお供をして旅をする道程で清姫の住む館に一夜の宿を頼むのですが迎え入れた清姫安珍の寝こみを襲うという行動をとるのです。

女犯の禁がある僧侶として安珍は抵抗するのですが清姫はなおも縋り付きます。

仕方なく安珍は帰路に立ち寄ることを約束してその場を逃れるのでした。

 

そして安珍は約束を反故にしてしまうわけです。

身の危険を感じての言い逃れとはいえ僧侶として約束した言葉を無下にしてしまうのはあまりにも考えが足りないと思われます。

そこが若き僧侶の未熟さなのでしょう。とはいえ子供でも約束の重要さを認識していることはあるのですからやはり美貌の安珍にはそれまでにもそうした経験(迫られて逃げる)があったのかもしれません。

約束を信じた清姫の執念、鬼になり龍にまでなった清姫が哀れに思えます。

 

もちろん女に襲われひどい目に会う安珍のほうに同情する人もいるでしょう。この物語はどう思うかの試験紙のようでもあります。