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松本清張ドラマスペシャル「顔」 | NHKドラマ

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引き続き松本清張ドラマです。

録画したままで未観賞でした。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

なかなか面白く観たのですがこの配役に谷原章介氏は合っていたのかな、とは思いました。

劇団に入った男が才能を認められ映画出演のオファーを受けるのですがその時の言葉が「これからは顔が綺麗なだけでなく個性的で演技の上手い人が主役をやる時代が来る」というものなのです。

しかし谷原氏はいかにも「顔が綺麗」な俳優なのでこのセリフを投げかけられる役者としては奇妙に思えます。

かといってあまりにも珍妙な顔だとそれだけで忘れられなくなってします。新聞で「ニヒルな風貌」とも書かれているのですがこれもおかしく思えます。むしろ「甘い容貌」と言われそうですし。

「独特のマスク」といわれる役柄に谷原氏を配役したのはちょっと首をかしげます。

その後「顔というより醸し出す雰囲気」という台詞で援護している風に思えておかしかったです。

これは「顔」の選択の問題なので谷原氏自身やりにくかったのではないでしょうか。

 

では今、誰が適役かというと・・・すぐにはぴんと浮かびませんw

とにかく高倉健さんのようなクールで苦みのある顔立ちではないのでしょうか。

健さんのようなタイプの俳優って?

 

おもしろかったのは主人公が自由になるために殺害する女性と映画共演する女性俳優が同一人物という演出でした。この主人公は自由にはなれないのです。

そして邪魔な女性の首を絞めて殺すときに戦争中に同じように縊り殺した兵士を重ねてしまうという演出ですが、これはなんだかその兵士との間に関係があったように思えてしまうのですがどうなのでしょうか。

 

戦争以前は父親と一緒に印刷工場で働き明るい笑顔を見せていた主人公が戦争で精神を病み帰国しても故郷長崎は原爆で破壊され家族は誰も残っていないという惨たらしさ。

戦争がなければ彼は善良な男だったかもしれません。

  

 

追記:大事なこと書き忘れていました。

ネタバレになってしまいますが本作を観ていると『砂の器』と重なります。親兄弟と離れ離れ(本作では死別)になってしまった主人公は女性に愛情を持てず芸術性にのめりこんでいきます。『砂の器』では音楽であり本作では演劇になります。

そしてその道を進むために殺人を犯してしまう。

悪行を犯した人間ではあるが深い悲しみがあるのです。