ガエル記

散策

日本短編漫画傑作集に少女漫画は入りません

普段ほとんどツイートをしない私がせずにいられなかった情報を知ったのが昨日です。

 

それは近藤ようこさんのツイートからでした。

 

 

近日小学館から発行予定「日本短編漫画傑作集」というタイトルで六巻にわたる著作があるのですがその中に少女マンガは一作も入っていない、ということから次なるツイートがあったのでした。

 

この方の連ツイートを読めばこの事件の本筋が解ると思います。
そしてそこへ私は知らない方ではあるのですがどうやら件の編集に関係されていると思われる吉田保氏が返信されたわけです。

 

この返信もあって私も含め多くの人が「は?」となったわけです。

 

 上のは私自身の近藤ようこ氏への引用リツイートでした。

 

多くの方の問いかけはこの「日本短編漫画傑作集」のタイトルからくるものです。「日本」という冠をつけながらなぜ「少女漫画」を除いているのか。

青年少年漫画からのみの選出であれば「日本青年少年短編漫画傑作集」もしくは「日本短編漫画傑作集~青年少年篇~」とでもすれば何の問題もなかったでしょう。

問題はそこだけなのです。

しかし吉田氏の返信が単純に

 

「今回は、少年、青年漫画なんです。少女漫画は入りません。」

 

 だけであったために、さらに

 と書かれてしまい「線引き?」となってしまったのではないでしょうか。

 

勿論日本の短編漫画は膨大にあるでしょう。6巻にまとめるには何かの「線引き」は必要なのでしょうがそれを「青年・少年」/「少女」としたというわけです。

しかしそれでいうなら「少年・少女」/「青年」でもよかったわけです。これは子供か成人かの年齢線引きですね。

他にのは作品の年代線引き、内容のカテゴリ線引き(恋愛ものに限る、とか逆にそれは省くとか)様々な線引きはできたはずなのにどういうものかここで「男女」という線引きを行ったわけです。

さらに吉田氏は

と書いて「決して女性差別をしているわけではない」と含みを入れているのですが多くの不満者が言っているのはそこではなく「なぜ日本なのに少女漫画が入っていないの?」ということだけなのです。
結局吉田保氏の返信は不満者たちの本質の問いかけにはまったく答えることができないまま終わってしまいました。

 

 

一連の問答に私はかなりがっくりとしています。

 

むろん(というのも悲しいのですが)一連のツイートには吉田氏への不満だけでなく例によって「また男女差別を言い出した。止めろ」の声も多くあります。

これこそ私が上で引用リツイートしたものなのですがこれは今に始まったことではなくかつてはもっと顕著にあったものでした。「日本」と題されているのに男性だけだった、というものを女性たちは黙って見過ごしてきました。それは私も含め「いちいち文句を言い立てるのはみっともない」という頭の良い考えからくるものでしたでしょうがはっきり言ってそれは間違っていたのです。

私たちはもっと早くからもっと強く「否」を訴えるべきでした。

「それはおかしい」を声にしなければならなかったのです。

 

その申し立てに反論する人の声の中には「女性に下駄をはかせる必要はない」「本当に良いものだけを選べばいい」という意見もあるのですがこと「少女漫画」に関して特に「短編漫画」においてはさらに上をいくのではないかと思っています。

 

日本では「青年少年漫画」は売上のためか長編が多く連載ではない単独の短編は限られています。

一方「少女漫画」は昔から単独短編が多かったためその技術も自然高くなっていったのではないかと思うのです。

もしかしたらこの線引きは「すべての日本漫画からほんとうに優れたものを選出したら少女漫画ばっかりになってしまった」というあの「東京医科大学でまともに選んだら女ばかりになってしまう」事件と同じなのかもしれません。

つまり「男性に下駄をはかせないと無理」はここでもひそかに行われたのかもしれないのです。

 

とはいえ結局元に戻るのですがそれなら最初から「日本青年少年短編漫画傑作集」とすればよかっただけの話なのですがなぜどうしても「日本」のみにこだわったのか。

 

近藤ようこ氏はとてもていねいで「少女漫画篇も出るといいですね」と優しい論調なのですが私は穏やかではいられませんでした。

 

別にツイートもしたのですが私はこんな良い企画なら是非カテゴリ別で組んで欲しいと思います。

例えば戦争篇で青年少年少女漫画の傑作のそれぞれの違いを読み込む。

恋愛篇、スポーツ篇、SF、ミステリー、ホラー、などで選出して青少年少女男女混ぜ込んで掲載すればとても面白く楽しめるのではないでしょうか。

6巻を青年少年でまとめて別巻で「少女漫画」を付録するとかなんだかもういやいやながらの付け足しみたいでげっそりです。

本件の選者が男性ばかりなので少女漫画は全員女性で、という意見もげっそりです。

もうまったく別の企画を立てて欲しい。

選者も男女混合にする。女性も青年少年漫画を選び、男性も少女漫画を選ぶというほうが良いではないですか。

いまだに男女それぞれ全く読んでいないわけではないですよね。そこにも女性はこういう青少年漫画の選択、男性の少女漫画の選択の面白さがあると思うのです。

 

日本短編漫画傑作集を出版する、という企画自体はとても素晴らしいことだと思っています。だからこそその中に「少女漫画」がはいっていない、というのががっかりだったのです。

世の中をにぎわすベストセラーマンガは長編に限られています。それらはそれらで良い作品ですが短編の味わいはなかなか話題になりませんし収益にもならないでしょう。

その作家を知らない人の目にとまるのは長編マンガに比べると奇跡的なほどでしょう。

そんな中で「この短編はもっと世に知られて欲しい」という気持ちでいろいろな作家が混在する短編集が作られるのは貴重です。

現在はもちろんすでに絶版になった秀作がこの機に復活すればいいなとも願います。

青年少年漫画以上に埋もれてしまった少女漫画の名作があるはずです。

小学館はもう一度考えを改めて欲しいですし、それが無理なら他の出版社からの

「すべての日本短編漫画傑作集」

を企画してほしい。男性女性で分けず選者も作品もごちゃまぜでお願いします。女が選ぶ女と男、男が選ぶ男と女、現在と昔、年代も様々、カテゴリも偏らずにいろいろ(カテゴリ別にするとなおよい)SFは無しとかは絶対だめ。線引きは結局R18ではないのでしょうか。これをやらないと売りにくいでしょう。

私は大人なのでいいんですけど。

 

 

短編漫画傑作集という企画はいろいろなカテゴリでどんどんやってほしいと期待しているのです。

 

さらにいえば少年・少女漫画という区分けも無くしていくという道もあるわけですがそれは区分けの良さもあるかもですから次第に変化していくことだと思います。

すでにあるはずですが区分けのないマンガ誌を出していくことで解決していくように思えます。