ダニー・ボイル監督の凄さを思い知りました。
大ヒットした映画の第二弾を二十年後に作る、というのは創作者の腕の見せ所になると思います。
特にユアン・マクレガー演じたマーク・レントンが当時坊主頭と細長い手脚が若さの魅力でかっこいいと人気だったような場合二十年後観客がどう感じるか不安になってしまうはずです。
ネタバレしますのでご注意を。
前作ですでに死去してしまったトミーを除けばかつての仲間が『T2』で再会します。
といっても主人公マークがオランダに逃げ延びた以外は皆同じ場所にいるわけです。
狂犬の如き狂暴なベグビーは長い刑務所暮らしに耐え切れず自らをぶっ刺させて入院し逃亡を図ります。外見はしっかりおっさんです。
シックボーイは比較的老けを感じさせない容貌ですがマークに金を持ち逃げされたため客の来ないバーを経営しながらケチな犯罪を続けています。
痩せていかにもヤク中らしかったスパッドは前回マークから分け前を唯一もらったのですがその金をすべてヤクに注ぎ込みますます痩せてヤク中らしくなっています。
われらがユアン・マクレガー演じるマーク・レントンはもしかして一番老けて見えるかもです。(いや大好きなんですが)
若きマークのアウトサイダーぶりがあまりにも細くかっこよかったので二十年後のマークのどっしり感が結構衝撃ではあります。笑顔は変わらずかわいいですが。
そしてダニー・ボイルの映像は昔と変わらないどころかより鋭いキレを感じさせます。
前作で私は監督はわかってはいるだろうけどあえて「運の良いクズ」を描いたのだろう、と書きましたが本作は「結局クズはクズ」とバッサリ切り捨てます。この切り捨て感には前作の甘さはありません。
五人の親友たちは一人死に四人が『T2』へと進みました。
彼らにもう一度「運の良い」事件が可愛い女性と共に訪れますがここでもそれを逃してしまいます。
唯一、スパッドが実はこの映画の原作者として大金と名誉を手に入れる、というメタ展開が発生します。
さてこの状況を観ていると再び先日観た『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を思い出してしまいます。
極めて鋭く現実を見つめたダニー・ボイル監督とは大きく異なり庵野秀明監督は二十年前と何ら変わらない碇シンジと仲間たちを描きました。
しかしその内容がかつて皆を心酔させたエモーショナルなものはすっかり老いさらばえていた、と私は感じたのでした。
にもかかわらず庵野監督は見かけだけはまだ思春期の少年少女たちとして描いたわけです。
二十年経てば登場人物たちが自然に年を取ってしまう実写とアニメは違いますがアニメを描く人間たちは老いていかざるを得ないのです。
私は一見少年に見えるかもしれないシンジの目の周りに深いしわが見えたのです。
それは実際に年を取るよりおぞましいことに思えます。
同じように若者たちの二十年後を描いた作品として見比べてみる面白さがありました。