1990年版ハリー・フック監督『蠅の王』鑑賞しました。もちろん『SonnyBoy』予習復習です。
1963年版ピーター・ブルック監督作品を初鑑賞した時は入りづらさを感じたものの今回はそのおかげかわかりやすく内容に入っていけました。
が反面ブルック版より凄みに欠ける気がするのはカラーとモノクロのせいなのでしょうか。
もちろんそうではないでしょう。
ネタバレしますのでご注意を。
ストーリーの大筋は同じですが表現はまったく違うように感じられます。
まずブルック版では冒頭に核戦争が起きたという世界の不穏な状況が描かれることで孤島に堕ちた少年たちの孤独がより強調されて感じますが本作はそうした戦争の脅威からは切り離して少年たちの野生と争いに焦点を当てるという解釈を取ったと思われますが果たしてそれが面白みを増したかというとそうでもなく逆効果になってしまったかのようです。
私は『SonnyBoy』の場合でも戦争を再現した『漂流教室』」と違う視点で作品作りをしたのを良い選択と評価しましたが、本作の場合はそれ以外があまり変化していないために主張が弱くなっただけのようにも思えます。
ブルック版は原作にもある聖歌隊が歌いながら行進する場面があってその歌声が奇妙に怖いのですが本作ではその演出もなくなっています。
さらにジャックとラルフの対立はブルック版のほうが強烈に感じられます。
特にジャックのカリスマ性はブルック版において恐ろしいほどでしたがフック版のジャックを観ている間そうしたぞっとする感覚にはならなかったのでした。
なによりも少年たちの狂気が薄まってしまった演出は残念です。
なぜかピギーくんはどちらもよかったように思えました。
収穫は本作の冒頭で孤島に高い山が登場することでこれが『SonnyBoy』でも取り入れられているのがわかったことです。あの高い山はアニメで何度も出てきますが本作からのイメージだったのでした。