ガエル記

散策

『皆殺しの天使』ルイス・ブニュエル

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これも『SonnyBoy』解釈参考のため初の鑑賞です。

たまたま先日録画していたのも何かの縁でしょうか。

 

以下ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

 

 

上流階級の夜会が始まる前になぜか使用人たちがあれこれと理由をつけて仕事を放棄し出て行ってしまうところから物語が始まります。

集まった紳士淑女たちは逆に明け方近くになっても宴会場から離れようとせず皆があちこちで眠り込むのですが目が覚めても誰ひとり立ち去ろうとしないことに気づき始めます。

何故なのか誰もがどうしてもこの部屋から出ていくことができないのです。

 

部屋の扉は開いているのにその一線を越えることができません。

主人から命令された執事までそこから出ていけないのです。

水も食料も尽き次第に正常さを失っていく人々。

礼節はなくなり他人のちょっとした行動にも苛立ってきます。

ついに夜会に誘った主人を責め主人は自ら拳銃を手に取ります。

 

そこで女性が声をあげます。

今の状況がちょうど「あの夜の位置と同じだ」と今ならあの晩に戻って外へ出ていくことができる。

 

皆はそれに賛同し堰を切ったように外へと出ていくのでした。

 

ここで話が終わりではなくこの後安堵した人々は教会へのミサへ赴くのですがここで再び外へ出られなくなります。そして外では兵士たちが銃を撃ち始め逃げ惑う人々を尻目に羊たちが教会へ入っていくところで幕が閉じられます。

 

なんとも不思議な物語なのですが一つの答えがあるのではなさそうです。

 

言えば今のコロナの状況も外へ出ていくことが(本来なら)できないわけです。

さらに水や食料が尽きてしまうこともあるし他の人がその家にはいってくることもできない、という状態なわけです。

様々な災害でも同じようなことが当てはまるのです。

そこでは普段は善良な人でもおかしくなることもあるのです。

 

『皆殺しの天使』と言うタイトルも意味深です。この天使とは最期の兵士たちのことなのでしょうか。

その正体はウィルスなのでしょうか。

 

今観ると本当に怖い作品として受け取ることができそうです。