昨日観た『サニー永遠の仲間たち』で珍しく韓国映画に失望してしまったのですが巷で高評価だっただけにかなり残念でした。
これも評判の高い本作『はちどり』を観てどう思うか不安もありながら本作のすばらしさにため息でした。
ネタバレしますのでご注意を。
昨日の『サニー』が青春ものとしてまったく共感できなかったのに対し本作は思春期もの、というのでしょうか14歳の少女の心の機微を細やかに描写していった作品ですがとりたてて同じ体験がないにもかかわらず少女ウニの魅力に惹かれました。
そしてこちらも家長制度による少女の抑圧と顔に傷を負ってしまう、という題材まで同じなのが奇妙なほどです。
昨日の『サニー』では顔を傷つけられた少女が自殺未遂をする、という展開にも反感を持ってしまったのですが本作では主人公ウニが手術によって傷を残すことを父親のほうが大泣きしてしまうのに本人はそれほど気にしていないのが対照的だったのでした。
ウニが苦しむのは手術の傷よりも大切な人を失っていく傷なのです。それはとても共感できることです。
そして本作でも暴力もまた表現されます。主人公ウニも『サニー』の少女たちと同じく反抗的な暴力をふるいます。
それも同じなのですがこちらはやむにやまれぬ抵抗の暴力で、それに対してもしっぺ返しが与えられてしまう筋書きになっています。そこが大事な部分なのです。
14歳のウニはまだ何もかもよくわからない時期です。
アップになる顔が初々しい。肌が白いせいで産毛が黒く目だったりします。
少しのことで傷つきますが抵抗するすべもあまり知らないのです。
年上の同性の先生の知性と落ち着きに憧れて得意なマンガのキャラクターに描きたいと思うウニの可愛さ。
後輩の女子に「好きです」と言われてまんざらでもなかったのに次に会うともうそっけなくなってがっかりしてしまう。
ボーイフレンドはまだお母さんのいいなりで失望してしまう。
家族は仲良くないし裕福でもないし夫婦喧嘩は絶えないし兄からは殴られる。
ウニの家は過酷とまでは言えないけど理想的とは程遠い。
特に優等生でも天才でもなく不良でも不自由なわけでもないウニの少女時代はなんとも切なくやりきれないのです。
そして本作映画はいまだ数少ない女性監督によるものです。
小説家やマンガ家や画家と違い映画監督を女性が担うのはまだまだ稀有と言っていいのではないでしょうか。
しかも女性映画監督作品で本当にすごく好きなものは私はまだほんの幾つかしかありません。
日本では皆無です。
韓国映画では本作が初めて、ではないでしょうか。
キム・ボラ監督作品観ていきたいです。