『夏と修羅』これはもう宮沢賢治好きならすぐにわかりますね。宮沢賢治著『春と修羅』から作られたタイトルです。
しかも冒頭がステーションだったので「お、これは銀河鉄道の夜のパロディか?」となったのですがそうそう単純な移し替えをしないのが夏目監督のようです。
とはいえ最初はそうなのかなと思っていたので骨折と朝風の関係をジョバンニとカムパネルラに当てはめるのだろうか、とも思ったわけです。これもそんな単純なものではなかったともいえるしやはり当てはめていたようにも思えます。
『銀河鉄道の夜』ではジョバンニがカムパネルラに憧れのような好意を持つ状況が描かれていきます。そしてカムパネルラが別の女の子と話したりするのを恨めしく思ってしまいます。最後にふたりにはなすすべもなく別れが訪れるわけです。
本作の骨折の思いも似たようなものではあり今回の話の中で骨折は朝風に見切りをつけて別れを決心したと思われます。
違うのは憧れのカムパネルラの英雄性が朝風にはなかったことです。
といっても朝風はそれこそ「カムパネルラ」のような自己犠牲で世界を救いたい、英雄になりたいという意識はありました。ただそれはそうすることで皆に自分の存在価値を認めて欲しい、特に希から賞賛してもらいたい好きになってほしいと願っていたわけです。
カムパネルラの心底もどうだったのかはわからないはずです。
そして人の心の声を聞くことができる能力を持つ骨折も朝風の心の奥底の声は聴けなかったのでした。
別行動の長良と瑞穂は瑞穂の能力を確かめていました。
猫配送の「ニャマゾン」でそれぞれが注文した生きたにわとり。
殺してみると長良が注文した鶏は死んだままで瑞穂の注文した鶏は生き返ったのです。
これでコピーの運命が違う謎が解けます。
現実世界の希は死んでいたのにこの世界の希は生きている、それは瑞穂の能力のためだったのです。
しかし希は「現実世界に戻る。私は死を受け入れる」と言うのです。
そして現実世界に戻れば力を失ってしまう朝風はそれを拒否します。
さて今回はかなり物語の謎が解き明かされました。
次回はどんな展開になるのでしょうか。
朝風はカムパネルラになるのか、それとも全く違う物語へと移っていくのでしょうか。
戦争がずっと同じ格好のままで心は空っぽになっていたことは何を意味していたのでしょうか。
本作品はあと二話で終わるのでどう決着がつくのか、と考えられますが現実の人生はいつまでなのかどうなるのか、まったくわからないわけです。