再鑑賞も最後になってしまいました。なんだろう。二倍の寂しさになってしまったような。
それでももう一度確かめてみてよかったです。
やはりいろいろ見落としているものです。
ではネタバレしますのでご注意を。
第11話「少年と海」
この見出しタイトルはヘミングウェイ『老人と海』からきているのでしょうけどシンプルなだけに逆にわかりづらいかもです。
しかしちょうどNHK「100分de名著」で『老人と海』を取り上げていたので驚きました。すばらしいシンクロニシティです。
知らなかった人は「これだったのか」と気づいたのでは。
『老人と海』で老人は長い間不漁だったのにやっと捕まえた大きな魚を食われてしまいますが少年は目的に向かって大きな収穫を得た、という違いを表現したのか、それとも「希というやっとつかんだ獲物(失礼)」を失ってしまったことを重ねたとみるべきでしょうか。
とはいえ実質的最終回ともいわれているこの11話は悲しくもあり爽快でもあります。
引っ込み思案で目立たない長良少年にとって憧れの象徴だった希と深く語り合える仲になり「元の世界へ戻ってもし漂流の記憶をなくしていたら覚えていた方が必ず〝友達になろう”と話しかけよう」と約束します。
かつての長良だったら希とのこんな会話はあり得なかったのです。
そしてその希を失っても長良は瑞穂と一緒に希の葬儀を行い悲しみを葬る儀式を済ませるほど成長しています。
ラジダニとの再会を心から喜び彼の救援を喜びそして親友となったラジダニに瑞穂には見せられなかった涙をぶちまけるのです。
感情がなく死んでいたような長良は感受性豊かな少年になっていました。
そして優しく楽しい漂流世界から辛く苦しいと解り切っている現実社会へ戻る決意は翻りはしませんでした。
第12話「二年間の休暇」
やはりこの12話は絶対に必要だと私は思っています。
戻った現実社会の何ともやりがたい虚しさは想像以上だったのではないでしょうか。
漂流世界で成長したと思えた長良はここではやはり元の「なにものでもない」人間でしかなく人に蔑まれ自己肯定感を持つのは困難です。唯一のよりどころだった瑞穂は漂流の記憶を失っているようでした。
その道は長良自身が選んだものですがそれでもその道は辛いものでした。
しかし漂流世界で長良が希に話した「どうせぼくはやっぱり鳥を助けないんだ」という言葉を彼は覆します。
ツバメのヒナを心配した長良は巣をのぞき込んで安否を確認しようとしたわけです。
そこに希がたった一羽助けられたというヒナを箱に入れて長良に声をかけるのです。
その希は衝撃的なことに現実社会での朝風とつきあっていたため長良はそれ以上話をすることはかないませんでした。
この展開に打ちのめされている視聴者がいっぱいいたのですがいやいや「物語はこれから始まったばかり」なのですよ。
今の長良はきっと希に声をかけるでしょう。
瑞穂との付き合いも続いていくことでしょう。
彼らがこれからどんな人間になりどんな人生を歩んでいくか、これからなのです。
それにしても瑞穂の最初の対応とその後のコップを割って窓の外に人影を見てから急に長良に覚えていたことを打ち明ける展開の意味はどうしてもわかりません。
どういうこと?
もう一度。
素晴らしいオリジナルアニメでした。
昨今日本のアニメはもうおしまいかも。と何度となく絶望していましたが突然さらりとこうした連続テレビアニメ作品が登場してくるのだからわかりません。
最初は「江口寿史?今頃?」と思っていましたがそれがあったから引っかかったのも事実です。
この漫画家によるキャラデザ原案というのはとてもいいアイディアではないでしょうか。
もちろん嫌われてしまう逆効果もありますが「原案」というのがミソですね。
最近のキャラはどデカ目が多かったのでほっとしました。
こんな企画が立ち上がる可能性はなかなかないでしょうけど期待をしてしまいます。
夏目慎吾監督の名はまったく知らなかったのにこんな嬉しい出会いもあるのだなとしばし幸福な時間を過ごしました。
ありがとうございます。