2014年公開。
もうひとつの『ジョーカー』のように思えました。知性が欠けているジョーカーとは違い感性が欠けているとうべきでしょうか。
しかも『ジョーカー』のアーサーより本作のルイスのほうがはるかに胸糞悪い最低野郎だとしか思えません。
まったく最初から最後までずっとむかつくばかりの映画なのです。なのに好奇心に負けて見てしまう、ということは観ているあんたがそもそもの元凶じゃないの?というわけです。
ではネタバレしますのでご注意を。
ルイスという男がどういう経緯でここに存在しているのか、はまったく説明がありません。いや台詞で少しだけ推察はできます。
彼は高卒で大した学歴がなくそのせいもあって職探しではけんもほろろに扱われてしまいます。
とはいえルイスはアーサーとは違い狡猾に頭が良いのです。
知性に問題があって上手く生きられないアーサーには共感できますが感性が抜け落ちているルイスには微塵も共感できません。
よくもここまでの胸糞野郎を描けたものだと感心します。
しかしあのラストには笑ってしまいました。
スクープ映像のために何の感情もなく「仲間」を死に至らしめるルイスには本作中にはなんの因果応報もなくかえって快活明朗に仕事を拡張しバリバリ働き続けるのです。
むしろこれでルイスはマジで立派な社長さんになってしまうのかもしれません。
アメリカでは、というか日本も含めこのくらいの犠牲は当然なのが現在社会なのだということでしょうか。
ちょうど今マンガ『チェンソーマン』を読んでいたところですが命の軽さというものが題材なのですね。
ルイスは胸糞野郎ですが彼はそうでなければ死んでいた、生きるために胸糞野郎になって何が悪い?ということなんです。
彼は別に「良い人」だと思われようとしているわけではないのですから。
今まで観た映画でも最低最悪の胸糞野郎なのにもかかわらず彼は一種のヒーローなのです。
絶対に「ステキ」とは言われないヒーロー(彼に魅力を感じる人もいるかもですが)
絶対に愛されないヒーローなのです。