ガエル記

散策

『ロボコップ』ポール・バーホーベン

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先日数日にわたって観続けました『決定版!SF映画年代記』の中でどうしてももう一度観たくなった筆頭『ロボコップ

ヘンテコ映画と記憶していたのですが作り手の深い思いを知ってもう一度確かめねばと思いました。

結果凄い映画でした。

納得しました。

 

 

以下ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

残酷な警官殺し。愛情深い正義漢マーフィーの手を銃で吹き飛ばす、という正視に耐えないあの場面はキリストの聖痕であったのですね。

そして体に受けた銃弾は彼の死を確かめるための槍だったということでしょうか。

 

マーフィーが死後ロボコップに改造された顛末で多くの男たちの身勝手な行動が描写されていきますがそんな中で彼を忘れずに助けようとしたのは女性警官アン・ルイスだけでした。

これもキリストの男弟子たちが皆彼を見捨てたのに女性だけがイエスに付き添ったエピソードと重なります。

 

そして今観ても、というか今観るとさらに彼女の描き方が独特で素晴らしいかがわかります。

マーフィーはすでに愛する妻子がいる男性でルイスとは異性の相棒として描かれています。ルイスはマーフィーの拳銃さばきが愛息子を喜ばせるためのアクションだということを聞いていてそのためロボコップが同じ派手な銃回しをしたことに疑念を持ったのでした。

ルイスとマーフィーの関係が友情というか相棒愛と言う形で描かれているのはとても気持ち良いものでした。

 

話題にもなる残虐性は今観てもかなりえげつなく特に最初に書いたマーフィーがてを吹き飛ばされその苦痛に悶えながらよろよろと逃げようとするのを悪党たちが嘲笑う場面はグロテスクに過ぎます。

しかしそれがキリストの磔刑を意味しているのならそれがいかに惨たらしいものであり苦痛であったかを表現している意味のあるものになります。

映画内で行われる犯罪があまりにもすべてが下品で猥雑なのですがそのためキリストたるロボコップに孤高の品格を感じます。

下種な男たちにレイプされそうになった若い女性を助けた時も生前妻帯者だったロボコップは抱き着かれて生真面目さを崩しません。子どもたちに優しいのはやはり息子を愛していた記憶が残っているからなのです。

 

ひたすら正義の警官の任務を遂行するロボコップが身勝手な上司たちの内輪もめのために殺されそうになる場面は胸が痛みます。

そしてロボットに課せられた条件付けのために悪党を殺せない危機が社長の「ファイヤー=クビだ!」の一言で解除されてしまう、というオチはなかなかのものでした。

 

「君の名は?」

「マーフィー」

は名セリフでした。

アイデンティティはなによりも大切なのです。

そせこれがキリストたるロボコップの復活した瞬間なのでした。

 

 

うーむ。観なおす価値ある作品でした。