コンテンツは、無限ほどあるのに観たいものがまったく無い!という叫びの中で偶然見つけました。まったくもって宣伝というのは重要ですね。たとえどんなに良い作品があってもそれを評価できる人間がいても出会わなければ意味がない。つまりそう言いたくなるほどこのドラマは良い作品なのに誰も教えてくれないし気づいてなかったんですよ。もっと良い宣伝方法誰か考えて!
wowowオンデマンドにて鑑賞しました。探しに探して。主演が有村架純さんだという以外にはなかなか人目につかない気がします。
有村架純が演じるのは「保護司」
法務省のサイトにこう書かれています。
「更生保護」は人の立ち直りを支える活動です。
その手助けをするのが保護司でありますが給与はなくボランティアで行われるものなのですね。
犯罪や非行を行ったいわゆる前科のある人たちに寄り添い社会復帰を見守る役目でしかも無給となれば自然と生活にゆとりのある年配者でなければ難しい活動と思えます。
しかし本主人公保護司はタイトル通りの新米で皆が怪訝に思うほどに若い女性です。上の画像に観られるようにメガネをかけた地味外見の佳代ちゃんが経験のなさのあまりの頼りなさを見せながら困惑し考え時に怯え動揺し勇気を奮い起こしていく物語になっていました。
最近の私は世に溢れるコンテンツの暴力性に失望していてそうでないものを探そうとしてもなかなか見つからないことにさらに失望しています。
本作もそもそもが犯罪・非行から起きる物語になるのですが主人公阿川佳代の奮闘に次第に惹きこまれてしまいました。
やはり「求めよさらば与えられん」は本当なのだと確信しました。
ではではネタバレしますのでご注意を。
第一話はまさに佳代の初保護活動です。懲役を終えて出所してきた斉藤みどりとの出会いです。
態度の悪いみどりに佳代は振り回されますが次第に彼女の本質を知ることになりそしてみどりのほうも佳代の取り乱した姿を見て心を動かされます。
みどりはこの物語にずっとかかわっていくキャラクターになりそうです。
第二話はうってかわってぞっとする恐ろしい話でした。
次に佳代が保護をすることになったのはやりすぎなほど真面目な青年・石川二朗でした。
律儀な態度に佳代は思わず「犯罪を犯した人とは思えない」とつぶやいてしまうのですがこの言葉に二朗は逃げ出してしまうのです。
佳代は自分の失敗に狼狽します。しかし「まじめで優しい青年」と思えた二朗の隠された部分が少しずつ見えてくるのです。
二朗を演じた大東駿介氏の演技がおそろしく不気味でした。
彼の罪は兄殺しだったのですがその内実は近所に住む幼い女の子へのつきまといを制しようとした兄への短絡的殺害だったのです。
「彼女とぼくは深く愛し合っている」と信じ切っていた二朗はその女の子から否定の言葉を聞いて打ちのめされます。
つまり二朗は勘違いで兄を殺してしまったことになるわけです。
物語中で二朗はその勘違いを理解するだけになんという取り返しのつかない殺人なのか、と逆に困惑させられます。
三人目は田村多実子。
覚醒剤取締法違反容疑で執行猶予の判決を受けています。つまりまだ実刑は受けていないのですが、この三人の物語の中でもっとも(いやどれももっともではありますが)悲しい話に思えました。
彼女も父親から虐待を受けていた過去があります。
そのせいで自分に言い寄ってくる男性たちに抗えないのです。
いわば『ソフィーの選択』症候群です。
という内容は先日書いた『ソフィーの選択』レビューを読んでもらうしかないのですが
あの映画『ソフィーの選択』は毒親からの虐待を受けたために常に「悪い選択をしてしまうソフィー」を描いたものだからなのです。
覚醒剤で執行猶予となった多実子はそれに対抗できる気力を持ちながらも男性の虐待には抗えないのです。刑務所に入りさえすれば安心して暮らせる、と願う多実子の考えはそこから生じているようにも思えます。
しかし佳代のやさしさを「神」と崇める多実子を見れば刑務所内でも暴力的もしくは優しすぎる女性を信奉してしまう予感がします。
その女性が(優しい方であっても)覚醒剤を勧める側であれば元の木阿弥になってしまう。
これも演じた古川琴音 さんが素晴らしくて本当の人だとしか思えませんでした。
多実子があまりに気持ち悪く悲しくてたまらないのです。それもソフィーに対して思った感情です。つまり彼女はメリル・ストリープ?
この6話で終わってしまうなんてあまりにひどい。
近々映画化されるそうですがドラマももう少し作ってほしいです。
有村架純の阿川佳代も少し観てみたいです。