さあどのくらい書けるでしょうか。
今まで書いてきたあらすじでは到底語り切れていないのですがジェーン・エアの前半はダイナミックに面白いものです。
しかし真髄は後半にあるのです。
ネタバレしますのでご注意を。
愛するロチェスターから去りジェーンは流離います。
手持ちの金もなく彼女は飢え泊まる場所もなく冷たい雨に凍えついには施しを願うまでになりますが追い払われて倒れてしまうのでした。
この描写はとても重要なものに思えます。
ひとつの神話のように感じます。
厳格な彼女がやっと愛し合えた人の過ちを許せず彼女自身も試練を受けるのです。
そして救済と更なる苦悩が与えられます。
ジェーンを助けてくれた優しい姉妹との交流と美しく厳格な牧師からの求婚です。
若い美男子でもあるこの男性の登場は言うまでもなくロチェスターの真逆にある存在です。
インドでの布教活動という崇高な理想を持ちそれには美女よりも忍耐強いジェーンが最適だと判断する男性でもあります。
ここにも笑ってしまう皮肉を感じます。シャーロットの発想はとても面白いのです。
ジェーンは相棒としてなら付き添うが妻としては嫌だと拒絶します。ここもジェーンらしい決断です。
そしてロチェスター氏の声を聞いたと感じた彼女は突然入った遺産を恩人たちに分け急いで帰るのです。ほんとうにジェーンは潔くてかっこいい。
再会したロチェスターは変貌していました。
屋敷で火事が起き狂人のロチェスター夫人は飛び降り死んだのでした。
助けようとしたロチェスターは片腕を失い失明していました。
今は別の小さな家で召使夫婦だけをそばにおいてひっそりと暮らしていたのです。
ジェーンが屋敷を出て一年も経たない間に。
さてここで最初の疑念はどうなったでしょうか。
財産目当ての財産は大したものではなくなってしまったようです。
年齢差と言ってもまだ40代であった男性は片腕になり失明し華やかな生活は望めそうにないばかりか要介護になってしまったのです。
逆に文無しだったジェーンのほうは遺産が入って金目当ての結婚は不必要になりました。何も知らない小娘とも言えないほど落ち着いた教養ある女性になっています。
このラストは「身分差年齢差の恋人たち」のラストとして素晴らしいものです。
シャーロットはこの辛抱強く耐え抜いた主人公たちに最後はささやかな幸福を与えています。
ロチェスターは片目がやや回復し歩ける程度になりました。
ふたりの間には子供が生まれ彼はその子の目を見ることもできたのです。
ジェーンの恩人である姉妹もそれぞれに幸せな結婚をしそして彼女に求婚した美男子の牧師セント・ジョンも己の理想であるインドでの布教を実現したのでした。
善良な人と憎悪の心を持つ人達との対比が描かれていました。
善良な人々は幸福になり憎悪の人々は不幸になりました。
そうではない、ということがあるのでしょうか。
憎悪の心を持っていること、そのことが不幸なのだということですね。
改めて読んでみてこれはとても大切なことだと感じます。