凄く良い映画でした。
事実このような歴史であったのかはわからないはずですがそれでも良い映画でした。
文字を作る、という話は世界中にあるはずです。その一つ一つがこのような希望と苦悩を伴う物語なのでしょうか。
ネタバレしますのでご注意を。
とはいえ日本での文字づくりの物語はまったく知りません。
そもそも韓国、というより朝鮮と同じく日本でも学問は漢字でありました。その知識は特別な階層のみそして男性のみに定められておりそのため後によりわかりやすい「ひらがな」(そして「カタカナ」)が生まれ女性文字として認識されていく歴史もよく似ています。
しかし漢字を変化させて作ったとされる「ひらがな・カタカナ」と違うのはハングル文字が幾つかの他国の文字を参考にしたとはいえ独自に作り上げた、という面なのですがそれゆえにその生みの苦しみは大変なものであったのだとこの映画を観て知りました。
日本人的には「漢字をそのまま流用すれば楽なのに」ということなのでしょうか。
そして後々に漢字を捨て去りハングルを国字とする朝鮮・韓国と今もなお漢字を国字として使用し続ける日本との国民性の違いは明確だと思われます。
私自身漢字が好きなのでこのままで良いと思っています。
さらにこのハングルを編み出したのは仏教の僧侶であったのも驚きでした。
日本人としては文字の編纂に僧侶が関係するのは学問として当然ですが儒教が国教である朝鮮国で仏教の僧侶が王宮に入り王の命で王と共に国字を創り出し後に宮内に寺院を(小さなものとはいえ)建立したことは国を揺るがす悪事として臣下の猛反対となったわけです。
王の正妃・昭憲王后が仏教の家系の出というのもこのハングル誕生に大きく影響していたように思えます。
そしてあの『殺人の追憶』大ファンとしてはこの映画のキャスティングがなんとも言えず。
世宗大王にソン・ガンホ、王と共にハングルを作り上げた仏教僧侶にパク・ヘイル、王の后にチョン・ミソンという三人が十数年後に相まみえたのです。
特にパク・ヘイルはあの時はごくごく新人で重要な役柄とはいえ短い出演だったのが今回はさらに大きな役者となったソン・ガンホと堂々たる共演なのですから私も嬉しくなりました。
王妃の存在も非常に重要なものでした。長い間ハングル文字は女性文字として認識されていくわけですがそれはこの王妃が女官たちに学ばせ広めていくようにと命じた効果がきっとあったにちがいありません。
王より先に没した(2歳ほど年上でもあったようです)王妃の葬儀が華やかなミュージカルのようだったのも素晴らしかった。
いやもう何回か観なおしたいです。