ガエル記

散策

『ゴールデンカムイ』を読む。

tonarinoyj.jp

 

f:id:gaerial:20220417052226j:plain

ゴールデンカムイ』いつかは全巻揃えたいのですが今文無しなので善意に甘んじてもちろん読ませていただきました。

こうした長編は中だるみ尻すぼみになりがちですが一気に完結へ走った意気込みも感じます。最高に面白い奇跡の如き物語、最後まで楽しませてもらいます。

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

この作品ほどどのキャラクターも魅力的、というものはないのでは。あまりに良すぎて誰かを選べ、ということができない。

それでもやはり最高峰は鶴見中尉なのでは、と思っています。

とにかく主人公側よりも作者は明らかに鶴見中尉とその部下たちを描きたくて描いているはず。

特に後半の宇佐美の描写は鬼畜の極みで夢中になりました。それもすべて鶴見中尉に愛されたいからという一念。

一番のイケメン鯉登音之進の鶴見中尉への盲愛も疼きます。

 

しかしみんなが愛するのは宙ぶらりんの尾形ですよね。あの光のない黒目は彼の心が闇なのを意味している。

この作品の登場人物が求めているのは皆が皆「自分を愛してくれる誰か」というもの。それが与えられないために皆が狂気に走っている。

 

この物語の目的は「隠された金塊」なのだがそれは単なるマクガフィンなのだ。そして登場人物は皆そのことをわかっていながら走っている。愛を得られなかった人間は何かで心を誤魔化すしかないのだと。

 

この作品はいわば「似非西部劇」として成型されている。

日本でも以前はこういう娯楽のための娯楽作品というジャンルの映画が多々あったのだ。その中ではこうした兄弟仁義が核として描かれていた。時代の流れで失われたしまったそのジャンルが再び現れたのはやはり何か求められていることなのだろうか。

 

杉元とアシㇼパは相棒として描かれている。年の差のあるこの二人組は現在ではロリコンなどと言われてしまいがちなのだけど作者は決して読者がそうは思わないように描いている。杉元は彼女の造詣に深い敬意を持ち年下の弱い存在とは思っていない。且つアシㇼパが「母親のような存在」という見え方もしない。対等でありながら尊敬する、という絶妙な関係性を創造している。

お色気ヒロイン役は谷垣源次郎であるのも皆の納得の設定である。

むちむちと肉付きが良く(男性)フェロモンダダ洩れキャラは人情に厚く恋愛体質でもありヒロインとしての資質を備えている。

 

ところで人気キャラ投票を見たら月島が第3位というのが驚きだった。

変態ばかりのこの作品で最もまともなのは月島かもしれない。とはいえこの世界でここまで律儀で誠実であることこそ変態なのかもしれないが。

月島人気というのはおおいに納得できる。