ガエル記

散策

『コーダ あいのうた』シアン・ヘダー

多くの人がそうかもだが観る前は嫌な緊張感があってすぐ止めてしまうのではと思ってもいました。

そしてたぶん多くの人がそうだろうと思えるのですがそれは杞憂にすぎず私は最後まで止めることはありませんでした。

 

そしてこの映画を作った監督はそうした観客の思いを先に掬い取って作ったに違いないわけですしそれ以上にこうした「障碍者映画」に出演してきた「健常者俳優」と出演されるべきだった「障碍者俳優」たちはもっと強く思いを持っていたに違いありません。

 

いきなり脇道に入ってしまいますが現在これまでにないほどLGBTQ映画が作られテレビで放送されていますが観たい気持ちになれないのはそれらが「いかにもLGBTQ映画だから」です。

今更まだ「LGBTQ」を特別視して観なければならないのか?

同じように障碍者映画も当たり前にいわば才能の一つ、個性の一つとして描写することはできないのだろうかと考えてしまうのです。

 

本作はまさにそうでした。

聴覚障害の家族」といういわば「重い設定」と呼ばれてしまうものがまったく、とは言わないまでも過剰な重さを加えられてしまうことなく過剰な泣きも与えず過剰な笑いで誤魔化すこともなくしかも充分におかしく面白く観てしまえたのでした。

 

こりゃアカデミー賞作品賞当たり前だわ。

 

この映画を撮るためにどれほどの心配りと努力があったことか、それはもしかしたらあって当然のものだったのかもしれませんがこれまでは無視されてきたものなのです。

 

映画の本筋をそっちのけで長々書いてしまいましたがこの感激はその価値があると思います。

素晴らしい物語でした。

未見ですがもともとフランス映画としてあったもののいわばリメイク作品というのが信じられないほどです。

同じくアマプラで観られるので続けて観る予定です。そこでまた感じるものがあるはずです。

 

言えば日本でも同じように映画化してみる意義はあるのです。その場合仕事は何になるでしょうか。

 

ルビー家族が住む家とそこで過ごす夜の情景を見た時これは特別な映画だと思いました。とても穏やかで美しい。その場所に行ってそこに一緒に座ってみたいと思ったのです。

 

映画もシンプルで美しかった。それだけで充分なのです。