ガエル記

散策

『瓔珞<エイラク>~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~』その17『如懿伝』との比較

台風のおかげもあって『瓔珞』最後にきて怒涛の鑑賞ができました。

となれば恒例『如懿伝』との比較をせずにはおられません。

 

 

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

さてまずざっくり比較感想を書きます。

『瓔珞』途中までは『如懿伝』を越える勢いで面白かったのですが後半は失速してしまいましたね。やはりどれほど前半が面白くてもラストが盛り上がらないといまいち感想が低下してしまいます。

逆に『如懿伝』はラストが涙だったので途中のダレ場を忘れさせて「良いドラマだった」と思わせる力がありました。

 

とはいえ偶然ですが『如懿伝』を観てから『瓔珞』を観た、という順番はとても良かったと思っています。勿論逆に観ていたらどんな感想を持ったかはわかるはずもないですが。

しかも間に『宮廷の諍い女』を観たのも良かったとひとり満足しています。このドラマで流れがわかりましたので。

この三作品を続けて観るのはお勧めだと思います。

 

とにかく『如懿伝』が主役の周迅が大好きなのもあってぞっこん惚れ込んだのですがその上ででも『瓔珞』の前半の面白さはそれを超えるパワーを持っていました。

そもそもが皇帝の幼馴染という設定の如懿とは違い庶民の娘である瓔珞は一介の刺繍宮女として紫禁城に入り運よく皇后付きの女官になれたもののその後辛者庫で便器洗いという過酷な仕事を強いられそこで一人の宦官と仲良くなり持ち前の明るさと知恵でのし上がっていくという筋書きはハラハラわくわくのし通しで目が離せませんでした。

瓔珞の師でもあり姉とも慕う富察皇后があまりにも優美でありケンカ友達の明玉とのやり取りも楽しく「これは『如懿伝』よりはるかに良い」とまで評価したのでした。

がそのとてつもない面白さははっきり言って富察皇后の敵討ちで終わったと言っても過言ではないと私は思っています。

そこまででまとめてしまっていたら最高のドラマになっていたのではないでしょうか。

 

とはいってもそれでは令妃としての活躍や影の黒幕・嫻妃との決着がつかないなどという(嫻妃の最大の山場・髪を切る場面とか)不満は残るのでしょうけど。

しかし瓔珞が二度目の円明園から後の話がまるでそれまでの面白さとは絶対に違うのです。順嬪の話などは『如懿伝』の寒香見に重なるのでしょうが寒香見の魅力や寒部の物語に比べるとはっきりと見劣りします。

そのままラストに行くほど質が低下していき「南巡」に至っては取ってつけた如くであの戦闘シーンは中華ものには必須なのだろうとはいえあまりにもお粗末でした。

もしかしたらこのラスト部分はドラマの人気が出たので急遽付け足したものなのでは、とさえ思えます。

前半のぴりりとした瓔珞の知性も表現されることもなくなってしまいました。明玉をあっさり死なせてしまうしそのことを瓔珞が思い出しもしないのがおかしいのです。

そして袁春望も上手く描き切れなかった残念さがあります。

返す返すも54話で終わらせていたら、と無念でなりません。

 

55話から話が奇妙に変わっていきます。袁春望が裏切者だとなってがっかりもしました。ここから70話までの16話がやけに長く感じます。

54話までは『如懿伝』を超える、と確信しましたが残りの16話を含めてしまうと全体としては『如懿伝』の趣のほうが勝ると私は考えます。

どうしてこうなってしまったのか、『瓔珞』の製作内部でなにかがあったのでしょうか。

あの鮮烈な面白さはラストで腐ってしまいました。

『如懿伝』もラスト近くになるとややダレてきて嫌な話が多くなってきます。

それでもあの悲劇的なまとめ方は素晴らしいと思いました。

『瓔珞』では如懿にあたる嫻妃皇后が迫力あるために何とか持った気もします。人格はまったく違いますが。

 

『瓔珞』ここまで面白い作品をどうして最後までやり遂げきれなかったのか、皇帝・瓔珞・富察皇后などが素晴らしかっただけに悔やまれてしまいます。やはり70話という長編ドラマのポテンシャルを保つのは困難なのですね。

 

最後にきてやり遂げきれた『如懿伝』(しかもこちらは87話)はマジで凄かったのだと思わされました。

なので『瓔珞』『如懿伝』のどちらが面白いか、と問われれば総体としては『如懿伝』です。

しかし前半というか54話まで(あと少しなのに惜しい)ならば『瓔珞』は確かに庶民として軍配を挙げたくなります。