ガエル記

散策

『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』高山文彦

以前観ていて中断していたのですが再挑戦してみました。


ネタバレしまうのでご注意を。

 

 

この作品が名作と評される一方嫌う人もいるようですが私が中断してしまったのからもわかるように嫌うのは当然だと思えます。

なのになぜ名作と言われてしまうのかといえばそう評しているのはやはり日本人的気質の人が多いからなのではないかと思えます。

先日記事で主人公アムロのいる連邦側ではなくジオン軍こそが日本軍なのだと書いたのですが本作を観ればいっそうその感が強まります。

ここでも主人公は中立地帯に住み連邦側に組している少年アルになっています。

アル少年はジオン軍の一兵士バーニィと出会いそこから二人だけの奇妙な作戦を描編み出し決行していく経緯が描かれていきます。

またもやバーニィの容姿は金髪碧眼の白人の様を呈しているのですがこれはもうお決まりの偽装でしかありません。

バーニィの行動はどう見ても神風特攻でありそこへ追い詰めたのはひとりの純真で無知な少年なのです。

アルは純粋に戦う男に憧れバーニィに夢を託しているだけなのですがだからこそ恐ろしいのです。

この作品を嫌うのは当然のことだと思いますし名作と謳われるのもまた然りです。

戦争というのはこんな風にして若い命を死へと追い込んでしまう。もちろん戦争でなくても様々な要因で無謀な計画を起こしてしまう若者というのは出てくるものですがその中でも戦争というのはこの作品のように無為なものだと思えます。いったいこの作品には何の意味があるのでしょうか。無駄死にとはこのことです。

この作品の価値はバーニィをカッコよく描かず戦争の一兵士の命などはこんなに惨めなものだと見せたところにあるのでしょうから。

 

本作は『老人と海』を下敷きにしているとのことですがバーニィが老人ではなくごく若い青年なのはやはり特攻を意識しているからだと思えます。

(なぜ特攻は若者ばかりだったのでしょうか。老人でよかったのでは?と埒もないことを書いてみる)

また『太陽の帝国』に似ているとの指摘を高山監督は否定したとどこかで書かれていたが映画を観る限りそれは当然だろう。

描きたかったのは少年と特攻日本兵の物語なのだから。