ガエル記

散策

『君、花海棠の紅にあらず』 恵楷棟 温徳光 その7

しばらく入り込んでしまいました。

エピソード30まで鑑賞。

 

ネタバレしますのでご注意を。

仲睦まじく出来すぎの夫婦に思えた程鳳台夫妻がケンカして別居状態に。

といっても原因は妻の弟。いかにも金持ちのボンボン的な范漣はとある女性と関係して子供を作ってしまう。例によって義兄・鳳台に泣きつき助けてもらうのだが世話を焼く鳳台を見かけた蔣夢萍に勘違いされ范湘児に告げ口されてしまう。勘違いの焼きもちを焼く范湘児のところへ偶然鳳台の別れた母親から手紙が届く。しかし女性名の手紙に怒った范湘児はその手紙を焼いてしまうのだった。

このケンカもうまい具合に物語に絡んでいます。

鳳台は有能ですがその資金はもともと妻・范湘児の持参金でした。その負い目を突き付けられて鳳台はかっとなり家を出てしまうのです。

妻・范湘児はおとなしいようでいて実は以前から強気だったこともわかりました。

このケンカでふたりの仲がより堅固になるのでは、と予想しています。

一方、ケンカによって鳳台は水雲楼に居候することになりよりいっそう細蕊との仲を深めていきます。

贅沢な鳳台を養うためこれまで金に無頓着だった細蕊が金儲けを考え出すのです。

 

そして細蕊の師匠である寧九郎との師弟関係エピソードもとても良い。

 

さらに鳳台の母親からの手紙を勘違いとはいえ焼いてしまった范湘児は手紙の主をつきとめます。そして鳳台の母親から頼まれた若い女性が訪れてきます。

「彼女は今も元気に舞台で活躍し方々を旅しています」と告げ託されたレコードを鳳台に渡しました。

しかし実は彼女はすでに亡くなっていたのでした。生前その若い女性に自分の思いを息子に届けてほしいと願ったのです。

母親が今も幸福に舞台に立っていると信じた鳳台は母のレコードを聞き嬉しそうに微笑むのでした。

 

とても切ないエピソードでした。それにしても物語の糸が丹念に織り込まれていてその素晴らしさに驚くしかありません。

 

そして崑劇・京劇。この世界の美しさ。泣きそう。