ガエル記

散策

『君、花海棠の紅にあらず』 恵楷棟 温徳光 その8

原題:鬓边不是海棠红、英題:Winter Begonia

エピソード34まで鑑賞。

 

とうとう恐ろしい日本軍が来てしまった。この恐怖感っていったいなんなのだ?

しかし曹万鈞の言葉は辛辣でもある。

「我が国が内部分裂している間に日本は強くなってしまった」

彼らにとってそういうことなのだろう。

とはいえ「強くなってしまった」意義はなんなんだろう。今でも日本はやたらと「強くなる」ことを目指しているが自分たちを高めていくようには思えない。

例えば少年マンガを見ても「強くなる」ことに重きはおいても深みを増していく面白さを描いてはいないと感じるのです。

 

鎖国をしている間、日本という国は深みを増していたのかもしれないけれどそれだけでは物足りなくなり他国からつつかれたことで一気に外へ飛び出しいきなり世界一の強さを持つことを目指していったように思える。

その中で関東軍大日本帝国軍という不気味な存在を生み出してしまった。

もちろん私だって日本がおぞましい存在だと描かれることは辛いと感じてしまうけれどこの時期の中国において日本軍が恐怖の存在だと描かれてしまうのは当然だとしか思えない。私自身日本軍が気持ち悪くて仕方ない。

 

しかし思えば陳凱歌『覇王別姫』はちょっと奇妙な描き方でした。

むしろ中国人のほうが京劇を理解しておらず蝶衣は日本軍人の愛好家によってその美を認められるのです。この表現は当時中国でどう受け止められたのか、とも感じましたがもちろん日本人の私としては「そうも考えられるのか」と妙に嬉しくもありました。

が、本作ではそうではなさそうです。

 

商細蕊曰く「日本人は京劇が新鮮で面白がっているだけ。ほんとうに理解するには転生しなければ無理」

京劇に詳しくない私はなるほどと思うだけです。

 

ところで私の楽しみは「七坊ちゃん」です。

彼が凄く好きなのです。

細蕊に心底惚れこんでいる七坊ちゃんが鳳台の存在を疎ましく思い嫌味を言ったりするのが楽しい。

 

そしてここにきてやっと「北平」ってどこ?と調べたのですがなんのことない「北京」のことだったのですね。

今でも台湾ではそう呼んでいると書かれていて面白い。

 

さてこれから苦しい物語になっていきます。

最初から判っていたことではあるしだからこそ面白くもあるのですが。

 

兪青のエピソードもよかった。

女優に見切りをつけてマカオで新聞社を立ち上げるという彼女と役者一筋に生きるしかない細蕊。