ガエル記

散策

『三国志』再び 横山光輝 三十二巻

三十一巻に続き同じく馬超表紙。同じ人物が続けてと言うのはあまりないので(最後あたりは孔明続きだが)お気に入りのキャラクターだったのではないでしょうか。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

曹操対馬超戦は長引く。季節は厳しい寒さの冬を迎える。が、曹操陣は城を築くことができずにいた。何度築こうとしても途中で馬超軍に破壊されてしまうのだ。

ここで曹操に秘策を授けた老人がいた。築いた砦に水をかけておけば自然に凍って火水にも潰えぬというのだ。

この策に曹操は喜びすぐに造らせ翌朝には氷の城塞が現れたのだ。

様子を伺いに近づいてきた上曹操に迫った馬超を許褚が許さない。その名を聞いた馬超はいったん引くことを決意する。

「無視するのか」と怒る許褚に「いや、お前の名に一目置いたのよ」と声をかける曹操。(やはり愛されてるなあ許褚)許褚は曹操馬超との一騎打ちを願い出た。

 

許褚からの挑戦状を受け取った馬超は「もちろん受けて立つ」と言い放つ。

翌朝ふたりの一騎打ちが始まる。

 

許褚相手に互角に戦う馬超曹操は慄く。

許褚はいったん戦いを中断し自陣に戻ると上衣を脱ぎ「これでよし」と再び舞い戻って戦い続ける。

が、馬超の鋭い槍さばきに許褚は槍を刎ね飛ばされ続けて差し込まれた槍をつかむ。

両者が掴み合った槍は半ばで折れ互いはその折れた槍で打ち合った。

曹操は「勝負は引き分けだ。許褚を引きあげさせよ」と声をあげた。

馬超軍はそのまま曹軍へと突進した。

応戦するも曹軍の旗色は悪く曹操は退却するしかなかった。

 

ここまでは馬超軍が優勢ではあるが曹軍の挟み撃ちの策略に韓遂は「いったん和睦を」と進言する。

ここから潮目が変わるのだ。

もしかしたら「和睦」と言い出した韓遂馬超は疑惑の芽を生んでいたのかもしれない。(絵的には感じないが)

曹操軍では賈詡が「馬超韓遂は支え合って強い力となっている。このふたりの仲を裂けば弱体化する」という策を講じていく。

 

馬超韓遂は和睦交渉を受けた曹操に対してかわるがわる兵を出して相手の様子を見張るという作戦を練る。

これがさらにふたりの仲を裂くきっかけを作ってしまった。

馬超曹操の言葉を信じていなければこの策略は成功だと賈詡は踏む。

 

曹操韓遂に親し気に話しかけることで馬超に疑惑を生じさせる。一度疑惑を持つと馬超はもう韓遂曹操が結託しているとしか考えられなくなってしまうのだ。

続けて曹操韓遂宛に読めないように上から塗りつぶした手紙を送る。これを見た馬超韓遂がわざと塗りつぶしたと考える。

しかも翌日疑惑を晴らすため韓遂軍に紛れ込んで様子を伺う馬超の目前で曹操の部下が「丞相との約束確かにお守りくだされ」と伝えることで馬超韓遂への疑惑は確かなものになってしまったのだ。

怒る馬超を部下が抑えいったん逃げた韓遂はやむなく曹操軍に降ることを決意する。馬超の疑惑はもうなす術がなかった。

 

こうして賈詡の策略はおもしろいように運んだ。

馬超韓遂陣幕へ入りその片腕を斬り落とした。が、曹軍がすでに馬超陣営に入り込み馬超を取り囲む。

「もはやこれまでか」と追い詰められた馬超馬岱龐徳が救い出して逃走した。

馬超の苦しい逃走が始まる。

つい先日まで韓遂とともに悠然と曹操を追い詰めていた馬超軍はいまや千騎ばかりとなり更に追われ次々と倒れ隴西地方に逃げ込んだ時はわずか三十騎というありさまだった。

それでも曹操は「再び力を盛り返す危険がある」と苛立っていた。

そこへ荀彧から帰都を望む手紙が届く。

長安には韓遂夏侯淵を置いて守らせ曹操は早々に都に引き揚げた。(と書かれている)

曹軍西涼軍を破る、の方はたちまち各地に伝わった。

 

この報に一番驚いたのは漢中の師君張魯であった。

漢中は一種の道教によって治められていた。

漢朝が三十年にわたってこの地を征伐しなかったのは土地が不便すぎて兵が出せなかったからである。そこで漢朝は懐柔策として毎年貢物を収めればその道教も認めるとしていた。

しかしここにきて曹操が攻めてくるのではないかという恐れが生じたのだ。

 

そんなある日、農民が耕している畑で玉璽の入った箱を掘り出すという事件が起こる。

玉璽を手に入れた師君は側近の勧めで蜀を攻略して一大国家を作らんと決意する。

(なんだか適当だなあ)

 

そしてここからついに蜀が物語に加わってくる。

この険しい自然の中に存在する蜀の国。そこを今治めるのは劉璋である。劉璋張魯が攻めて来る、という噂に慄いていた。

そこで声をあげたのが張松である。張松曹操の力を借りて漢中・張魯を攻めてもらうことを提案した。

張松曹操馬超を疎んじていることを利用し馬超張魯と手を組むのを阻止するためにも漢中征伐が必要だと説得するつもりであった。

 

張松はその準備として蜀四十一州の絵巻を画工に描かせた。精密な絵巻と共に黄金真珠などの献上物取り揃えて張松曹操の元へと向かった。(四川省で真珠?と驚いたが淡水パールというのもあるのか)

そしてこの張松の出立はすぐさま間者によって孔明に報じられ孔明張松の様子を探らせる。すごいな孔明

 

こうして張松曹操に助けを求めに許都へ赴くがなかなか曹操に目通りできないばかりか賄賂をとられやっと会えた曹操からは侮蔑の言葉をかけられただけだった。

曹操はどうも張松の容姿を快く思わなかったようだ。

張松に質問をした部下はその賢者ぶりに感嘆し曹操への再会見を取り計らってくれた。

が、曹操張松との再会見でも立腹した。曹操の傲慢な態度に張松もまたやり返したのだ。曹操は怒り首を刎ねよと命じる。

さすがに部下がそれを止めたが曹操の怒りは収まらず百叩きの上追放となった。

 

百叩きで痛めつけられた張松

張松はこのままでは帰れぬと思いこのまま荊州の劉玄徳に会おうと決意する。

蜀四十一州を描いた絵巻をまだ手元に置いていたことが幸いであった。

翌日苦痛を堪えて張松荊州へと向かう。

 

 

張松さん、横山氏が描くキャラとしては破格な容貌なのだけどすごく良いのだよね。

曹操を前にして反抗する姿勢も素晴らしい。

それなのに・・・運命はわからないなあ。