ガエル記

散策

『三国志』再び 横山光輝 五十巻

姜維が好きです。

 

 

 

ネタバレしますので注意を。

 

 

 

孔明の北伐は新魏帝・曹叡の知るところとなり大いに怯える。

夏侯楙が名乗りをあげ長安へと向かった。

 

一方の孔明軍では趙雲がまたも孔明に年寄扱いされてしまったことに苛立ち過剰な奮戦を行う。

趙雲の強さは破格であるがあまりに深追いしすぎ疲弊したところを魏軍に襲われた。

「もはやこれまで」と思った趙雲の前に関興張苞のふたりが現れ武者ぶりを見せる。

趙雲も若き武将の勢いを見て「時代が変わったのだ」と思いをはせた。

 

夏侯楙は張苞関興さらに軍勢を立て直した趙雲まで追撃に加わり南安郡へと逃げ込むしかなかった。

安城は堅固で簡単に落ちない。

そこに登場したのが孔明である。

孔明は計略をたてた。

まずは北に位置する安定城を落としその城主崔諒を使って安南城の夏侯楙を捕えよと命じる。崔諒は命じられた通りに安南城に赴くがここで逆に孔明を捕える計画を立てて戻り孔明に「合図と共に城門を開きますので丞相じきじきに乗り込まれては」と申し出る。

孔明はこの計画に乗ったふりをして張苞関興に言い含め崔諒と共に南安城へ向かわせ門を開けさせ崔諒を殺して火を放った。

夏侯楙は南門から逃げ出すしかなかったがそこにも伏兵は置かれておりあっという間に捕らえられてしまう。

 

さてここから若武者・姜維の物語が始まる。

姜維は魏の人である。

孔明は南安の近くにあるもうひとつの城天水城も同じようにして落城するつもりだった。

夏侯楙の使者を出し夏侯楙を守るために出陣せよと命じて城主が城を出たすきに奪い取る方法だ。

太守馬遵もそのとおりにするつもりだったがそこへ待ったをかけたのが若武者・姜維だったのだ。

姜維孔明の計略に疑問を感じ太守に進言した。

太守もまた姜維の意見を飲んであえて計略に乗ったふりをして姜維に蜀軍を討たせたのだ。

孔明の策略で出陣したのは趙雲だった。

趙雲は若武者姜維の槍に感嘆した。

趙雲軍は完膚なきまでに惨敗し趙雲はからくも血路を開いて逃げ延びるしかなかった。

 

これを聞いた孔明は驚く。

周囲の者に問うと同郷の者が説明した。

母子のふたり暮らしで評判の親孝行者だという。さらに学を好み武を練り麒麟児といわれているという。

これを聞いて孔明は自ら陣頭に立って天水に迫ろうと決意した。

 

が、孔明はこの小さな田舎城で思わぬ苦戦を強いられる。

姜維孔明が陣頭に立つことも予想しておりそれを上回る計略を使ってきたのだった。

孔明はやむなく陣から逃げ出さねばならなくなってしまう。

兵の数は少ないながら大軍に見せかけた陣形を作り姜維孔明を追ってきた。

孔明にとって生まれて初めての敗戦となってしまったのだ。

 

孔明軍の被害は予想外に大きかった。

孔明としては姜維ひとりに手こずっている場合ではなかった。彼は魏を破らねばならないのだ。

孔明姜維を味方にする手段をとる。(と後にわかる)

姜維が親孝行であるのを利用した計略だった。

 

孔明姜維の母がいる冀城を攻めたのである。

姜維は太守に平伏して母を守りに行きたいと願い出た。

太守も姜維の心根を思ってこれを許した。

 

さてこの先、夏侯楙をはじめ天水城の太守たちも姜維が蜀軍へ降った、という孔明の策略に騙されてしまう。

とはいえ天水城の太守たちは「あの姜維がまさか」と信じられない。

が、蜀軍の夜襲の中に現れたのは姜維の姿であった。

この若武者ぶり。

かつての馬超の登場と甲乙つけがたい名場面だと思う。

 

のだが、この人が姜維ではないのがおかしい。

 

しかし姜維の存在は『三国志』のラストを飾る。

孔明がなんとしてでも姜維を手に入れようとしたのは果たして良いことだったのか。

この後の蜀軍の先細りを思うと姜維だけが希望でもあるのだけど。

 

遅れてきた青年、という思いがつのる。