最初に特別番外編があってその後三話にわたって一つの物語が成されます。
ネタバレします。
いやもうほんとにすばらしい。
ケルンが古代ローマ時代から続くという事柄を使って犯罪作品を作っていく手法に痺れる。
そしてなにかにつけて知識豊富なカイ修道士。
彼は『薔薇の名前』のウィリアムをイメージしたキャラクターなのではないかと思われる。
一応容貌もその映画でウィリアムを演じたショーン・コネリーに似せたのではないだろうか。
キリスト教修道士にもかかわらず古代ローマの知識も豊富なカイ修道士から教えられる大地母神キュベレの物語が面白い。
特別番外編、と銘打たれているが本編と同じくらいの重厚な事件話である。
なぜ番外編なんだろうかw
ところでこうして読んでいくとやはり青池保子氏は正統な横山光輝継承者だとしみじみ感じます。
男ばかり出てくる、というところはもちろんだけど主人公の頑なな人格だとかにじみ出てくるおかしみだとかややこしい物語を丹ねんにじっくり描き込んでいく根気強さとか横山光輝と青池保子のマンガ創造は同じ系譜であると思えます。
さて「特別番外編」から先のchap。19・20・21。
小見出しタイトルがないので呼びにくいが「七年間の空き家」とでも題すべきか、の通常編に入る。
この作品の鍵は「ローマ時代から続くご先祖様のデスマスクで作った胸像」である。もしくは蠟で作ったデスマスクの少女ともいうべきか。
どちらにしても「デスマスク」が鍵となっている。
七年間の空き家、とデスマスクとケルンで開業しようと現れた医師夫妻と七年前に市警を辞めた男シュイフが織りなす犯罪物語でとても充実している。
まぜっかえしてしまうが3・4に渡る長編よりも一巻でまとめた物語のほうが青池氏には合っているのかもしれない。