ガエル記

散策

『ケルン市警オド』青池保子 6

現在の最新刊であるようです。以前「浦沢直樹の漫勉」で紹介された巻ですね。

 

 

ネタバレします。

 

 

今回の鍵は「赤い橋」

ほう、ドイツの民話か民謡か、と思ったらどうやら浅川マキ「赤い橋」から着想を得たということらしい。(明言はされてないけどたぶん)

 

そして今回気になるゲストはやはり「鳥刺し」ヤン君だろう。

ちょい役かと思ってたら重要人物だった。

 

 

さらに鶏冠石。「宝石並みに高価」と言う説明がなされるがこれも重要な鍵となる。
赤の顔料となるのだがヒ素を含んでいる硫化鉱物なのだ。

 

ベルンベック家という貴族一族の終焉とそれに殉じた忠実な家令の物語だった。

 

最後に作者青池保子氏のこぼれ話が記してある。

自宅マンションの南側に古くからの雑木が残る小さな森がある。そこにたくさんの野鳥が群れ集い恩恵を感じていた。

ところが地主がそこを伐採し駐車場にしたのだ。

 

普通ならそうした行いを嘆き地主への怒りが綴られるだけだろうが青池氏は土木建設業の家で育ったためか重機が大好きらしい。

それもあって青池氏は見事なユンボ操作に見惚れながらも悲しい、という複雑な日々を送り森の最期を見届けることとなったのだ。

後には派手な大看板の風景が広がっているのだという。

我がことのように寂しいエピソードであった。

 

そしてその思いから本作の物語ができたのだろう。

鳥刺しヤンのメルヘンチックな佇まいは失われていく森への憧憬にも思える。

 

それにしても青池保子氏の創作力並大抵ではない。