楽しい。
昨日まで立場や規則に人生を縛りつけられ平和と幸福を求めながらも戦争という地獄に落ち込んでいく物語を味わった後では「こんなくだらない生活こっちから願い下げだ」と無法者になっていく男たちの清々しさよ。
ところで「日本では『三国志』は人気があるが『水滸伝』はあまりない」という評をよく見る。それは日本人がお上に従って生きる性質で『水滸伝』のような反逆者の精神は持っていないからだと続けられるのだが果たしてそうなのだろうか。
『水滸伝』より『三国志』のほうが人気がある、というところまではそのとおりだろうが、では新しく作品を作る上での見本というか教科書というかテンプレート的なものは案外『水滸伝』なのではなかろうか。
『水滸伝』はとんでもない事件に巻き込まれて人を殺めたりすることでお尋ね者となってしまいやむなく梁山泊という場所に集まってしまうという物語だ。
マンガ作品で考えれば『チェンソーマン』は明らかに『水滸伝』的であるし、『銀魂』もそうだ。『ゴールデンカムイ』は思い切りそうだろう。
それらが『水滸伝』を意識して描かれたかは知らないがアウトローな集まり、という作品が日本では受けない、とは言い切れないのではなかろうか。
とはいえ本作『水滸伝』自体はあまりにもファンタジーすぎると感じてしまうのは「男しかいない」(ほぼ扈三娘のみ)ゆえにここに女性が混じると『水滸伝』世界は崩壊してしまいそうにも思えるからかもしれない。
が、新しい『水滸伝』世界の『銀魂』『チェンソーマン』『ゴールデンカムイ』他いろいろは女性が混じっても多くても成立しているので男女混じった『水滸伝』は別に在り得るのではないだろうか。
しかしこれこそが時代の移り変わりで感じられることなのかもしれない。
それにしても読んでいると『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』の印象がいかに強かったかがわかる。
鉄牛、呉先生、戴宗の兄貴が登場した時が嬉しくて仕方なかった。