1970年「なかよし」9・10月号別冊付録
原作付きと今頃気づきました。
ケーキが題材で家族の中で孤立した少女という設定だったので萩尾望都オリジナルと思い込んでいました。
検索してたら萩尾氏が執筆前にパリから帰国したばかりの手塚治虫先生にアドバイスをもらったというとんでもない幸運話を読んで「凄い」とただただ感心するばかりでした。
萩尾氏は手塚先生を尊敬していてしかも何度も会話をされてて慄きます。
昨今手塚先生の人格についてあれこれと噂されてて私も「そうであったのだろうな」とは思いますが萩尾望都になると逆に手塚氏の能力をしっかり吸収してしまうという、やはり女神なのだなと感じます。
ネタバレします。
ところで本作『ケーキケーキケーキ』は最上の画像の本で読みました。もちろん表紙絵は後で描かれたものであります。
中の画像が本作表紙。
こうした数人絡む絵をかっこよく描けてしまう。
下の画像は特に印象的な場面をと選択してみました。
主人公カナが憧れたフランス人ケーキ職人アルベールのケーキです。このケーキが本当に上品な美味しさを感じさせます。
私はあまりケーキに憧れがないのですが(パンが好きだ)このケーキは食べてみたい。
名前は「ロム ウールー」幸せな人というらしい。
さて主人公の塩崎カナの両親は三人の娘にそれぞれ文学・音楽・美術を勉強させて芸術家姉妹にするのが夢だった。
上の二人の娘は希望通りの道を進んだが末の娘カナだけは絵画よりもケーキが大好きという望まぬ娘に育ってしまう。
しかしカナはケーキ好きが高じてフランスで菓子職人になりたいという夢を抱くようになる。
そのきっかけが先に書いたフランスからやってきたアルベールのケーキを食べたことだったのだ。
現在のマンガなら男子でもここまで積極的ではないかもしれない。
萩尾作品の少女は『スター・レッド』『ゴールデンライラック』と脇目もふらず突っ込んでいくタイプが多いとも言える。
この辺、悩み多き手塚ヒーローよりも真直ぐつき進む横山光輝キャラを感じさせる。
その分ちょっと少女的ではないかもだけどそういうところが私には心地よかったのかもしれない。
ところで本作のラストの演出が山岸凉子『テレプシコーラ』第二部の終わりと似ているのは偶然なのか。
よくある演出、かなあ。