1971年「別冊少女コミック」3月号(1971年1月)
萩尾望都の代表作と言われ初期から挙げるのならまず本作になるのではないでしょうか。
ネタバレします。
13歳の少年と少女の物語。
表紙絵のエミールは12歳の少年・・・として育てられたが本当は女の子なのだ。
富豪のブルクハルト家に招かれた親戚筋の少年ブロージーはその途中で金髪の美しい少女に出会う。
が、到着したブルクハルト家でブロージーを出迎えたのはその少女にそっくりな少年エミールだった。
ブロージーはそのエミールの友人になってくれとブルクハルト家の老主人に頼まれて訪れたのだ。
そして同じ理由でやはり親戚で同年齢の少年たちが数人集められていた。
ブロージーはこの奇妙な集合が病弱なエミールの後釜になるためだったと知る。
少年たちは皆エミールが気取り屋でいけすかないと嫌っていた。
だがブロージーは最初に会った少女にそっくりなエミールに心惹かれていたのだ。
そんなブロージーを見てエミールは「ぼくの秘密を教えてあげる」とささやく。
誘われるままブロージーはエミールの部屋に行く。
そこにいたのは最初に出会ったあの少女だった。
エミールはあの少女自身だったのだ。
エミールは”ほんとうは女子”なのだけど男子になりきっているために少女の姿になっても男子として話をする。
エミール自身「少年エミールとして育てられたどそのことになんの不満も持っていない」という「こんな姿をするのもただの遊びだ」と。
だけど、ではなぜそんな遊びをしたのだろう。
エミールは少年なのだろうか、少女なのだろうか。
現在ではLGBTといい心の性別がその体と一致しないことをトランスジェンダーと称したりする。
しかしエミールはそう育てられただけであって本人が求めたものではない。
なのにエミールは不満を持っていないという。
いいながら遊びで元の性に戻ったりする。
そしてそうした誤魔化しができなくなる第二次成長期の前にエミールは命を断つ。病弱で後数年しか生きられないのだとはいえ。
ブロージーは自分が「少年のエミールに恋をした」と自覚する。
とはいえこの物語も突き進む少女と悩む少年の物語でもある。
少女は少年として生きることに突き進み少女になりたい時はなるのである。
そしてそんな秘密を持つ少年エミールに心惹かれるブロージー。
・・・たぶんブロージー、一生歪んだ性癖で生きるのである。