ガエル記

散策

『かたっぽのふるぐつ』萩尾望都

1971年「なかよし」4月号増刊(1970年12月)

萩尾作品初期ほとんど一度は読んだことあると思っていたけどこの作品は初見かもしれない。

それとも怖くて忘れているのだろうか。

 

ネタバレします。

 

 

「昭和」という文字を見るとまず思い出してしまうのはどうしてもこの公害になってしまう。

だから「昭和は良かった」と言う気持ちがどうしても起きない。直接公害を心配するような場所には住んでいなかったがそれでもニュース、マンガ、アニメなどで語られる様々な公害とそれによる病気に慄いていた。

ゴジラシリーズではヘドラが登場した。考えただけで一番恐ろしい怪獣ではないか。

 

本作はそんな公害への恐怖と怒りが充満している。

可愛らしいユウくんがその犠牲者として死んでしまう。

ユウは親友のシロウに見た夢の話をする。石油コンビナート対人間による第三次世界大戦なのだという。

しかし石油コンビナートは人間が作っているんだから人間対人間ってことじゃないか。

石油コンビナートは怪獣になって襲ってくるのだ。

 

この作品を読むと当時の萩尾氏がほんとうに公害に対して生々しく怒りを感じていたのだと伝わってくる。

苦しみ死んでいったこどもたちのことを忘れることはできない。

 

もしかしたら若い世代は本作を読んでSFだと思ってしまったりするのだろうか。

一種のディストピアものだと。

そのとおりあの頃はディストピアだった。

 

今は疫病の社会に怯えるディストピアがあるけれども。