1971年「少女コミック」39号(創作時わからず)
本作『もうひとつの恋』手持ちの本&デジタルに見つからず思い出せず「そうか。未読だったのか」と慌ててデジタル版購入。
そして読んでみたらものすごく覚えていました。
しかし確かに最近は読み返しておらず。
どれかの本に収録されていたのっか、もしかしたら少女コミック掲載時に読んでいたとか。まったく記憶がないのですが内容はしっかり覚えていました。
とはいえどうせ見つけきれなかったので購入したことに後悔はなし。というか買ってよかった。
ネタバレします。
何回も書くがこうしてまとめて続けて読んでいくと様々なことが見えてくる。
(すぐわかる人はわかるんだろうけど)
萩尾氏作品の特徴の一つ、男女の双子。
ところで男女の双子って女性マンガ家はよく描くけど男性マンガ家は同性双子(女性同士、男性同士)はままあれど男女の双子ってほぼ皆無かなと思う。そこに違いがある。
つまり男性はよく似た男女と言うのをほとんど描かないが女性はよく描くのだ。
つまりそっくりなのに異性ということで何かが起こる、と言う話が女性にとっては重要だが男性はそうではない、ということなのだろう。
本作でもそっくりな男女双子のジョイとビッキーのジョイが結婚する前の晩、死神が現れてジョイはバイク事故で死んでしまう。
幽霊となったジョイはワイルドとの結婚をあきらめきれず双子のビッキーの身体に入り込んで結婚式を終えてしまう。
「誓いのキス」で目を覚ましたビッキーは再び気絶。
再び目を覚ました時はワイルドから迫られ裸になって男のビッキーであることを見せてワイルドはびっくり仰天。
例によってドタバタが始まる。
とはいえビッキーはいったいどうしてこんなことに、とつぶやいていると鏡の中に双子の姉ジョイの姿が見えた。
鏡の中のジョイはビッキーとワイルドに事の顛末を話す。
そしてジョイは再びビッキーの身体に乗り移ると言い出す。
ビッキーのガールフレンドマリーも加わり大混乱に。
そのドタバタ劇を眺めていた死神は姿を現した。
しょぼい姿の死神に皆は唖然。
しかしここで死神が双子の男女を間違えていたことが判明。死ぬのはビッキーの方だったのだ。
またまた大騒ぎになる皆に死神は「時を戻せばいいのです」と時計を戻した。
つまりここでも「時計」がモチーフになっている。
時間が戻った。みんなはさっきまでの記憶を失っているが本当に死ぬことになったビッキーには記憶がある。
以前、ジョイがバイク事故で死ぬ前にビッキーに声をかけたのだがマリーと電話していたビッキーはおしゃべりをやめずビッキーを追い出したのだった。
しかし今度は追い出すわけにはいかない。それでジョイはバイクに乗って出かけてしまったのだから。
ビッキーは電話の向こうのマリーにことわってジョイと話をする。
そしてアダモのレコードを渡して静かにベッドで聞けばいいと伝える。
ジョイは出かけることはない=バイク事故はない。
さて死神はビッキーに死因の「高いとこからおっこちる」をやってくれという。
が、ビッキーは「結婚式の前に死人を出すわけにはいかないよ」と断った。「ぼくは君のミスをおぼえているからね」と脅すのである。
記憶を残したために脅されることとなる死神。
やむなくビッキーの死を一日延ばす。
そして結婚式の当日、ひいおじいさんが昨夜階段から落ちて死亡したという電報が届く。
117歳、誕生日がビッキーたちと同じ日で名前もビッキー=ジョンバインだったのだ。
つまり死神が間違えたのは男女ではなく17歳のビッキーではなく117歳のビッキーだったのだ。
ビッキーは死神を急がせた。
なんという楽しい話。
おっと、こういう風にして男女の双子が入れ替わり恋のドタバタ劇が起きる、という話が女性は大好きなのだが男性はどうもそんな発想は求めないようだ。
好きな人もいるかもしれないが男性向けマンガに登場したかどうか、記憶はない。
男性同士双子と女性という組み合わせなら有名な『タッチ』があるが。
このジョイ&ビッキーを見ていたら萩尾氏後年の『恐るべき子どもたち』が連想される。
こちらは双子ではなく姉弟でそっくりなのは少年少女期のみなのだが短めの金髪という容貌がとても似ていてもしかしたら萩尾氏はこの頃から『恐るべき子供たち』のイメージを持っていたのかもしれない。
しかししょぼい容貌の死神という発想がおもしろい。