1973年「別冊少女コミック」1月号~3月号
バンパネラであるエドガーとメリーベルのまだ人間だった頃のお話です。
ネタバレします。
1700年代。
初めて読んだ時は考えてもいなかったが読みかえしていくとはっきりとこの物語が見捨てられた子どもの話だと認識させられる。
エドガーとメリーベルは実際は殺せと命じられて殺されずやむなく捨てられてしまう。
それを拾ってくれたのが老ハンナ・ポーだった。
エドガーたちはハンナの館で育てられるがここでも村人たちから怪しげな者たちとして疎外されている。
昔は何も思わずポーの雰囲気にひたっていたが今読むと(今更!)なぜポーの一族は「年を取らず永遠の時を生きる」というのにハンナと大老は老人なのだろうか。
もし萩尾望都氏が絵が下手で若い人の顔しか描けないのであれば逆によかったのかもしれないがなまじ技量が高かったために威厳ある大老にしてしまったのだろうと思ってしまう。
今ならイメージ的には『スター・レッド』でのゼスヌセル系のアーブの人々のような感じで描かれるのかもしれない。
ポーの一族の儀式を見てしまったエドガーはハンナの意志で10年後つまり二十歳になったらポーの一族に加えると言われる。その時に何百年と眠り続けている大老ポーを目覚めさせるつもりだった。
エドガーはその条件を受ける代わりにメリーベルだけは遠い場所で普通の生活をさせてほしいと願う。
ハンナは承諾しメリーベルだけは何も知らせずに男爵家の養女になるよう手配した。
が、女房がバンパネラに襲われて死んだと恨み続けている村人ビルのおやじにハンナは殺されてしまう。
ハンナの死に怯え騒ぎ出す館のバンパネラたちはまだ14歳のエドガーをどうするのかと話し合った。
そこに大老ポーが目覚めハンナの遺志どおりにエドガーを一族にしたのである。
さてこの先はオズワルドの目を通して観るエドガーとメリーベルの話になっていく。
オズワルド自身も見捨てられた子どもでもある。
伯爵家の長男でありながら母親は次男を溺愛し父親はかつて愛したメリーウェザーとの恋、そしてその間に生まれたエドガーとメリーベルを欲していた。
しかしオズワルドには美しい恋人という絆があったためにポーの一族には加わらなかったといえるのではないか。
メリーベルはユーシスを失ったためにエドガーのほうへと行ってしまったのだ。
最後にオズワルドを抱きしめるマドンナの頼りがいのあること。
愛をもらえなかった人間はポーの一族になってしまうのだ。