1975年「別冊少女コミック」5月号
シリーズ第8作。
第4作「ポーの一族」の続きとなる。
ネタバレします。
妹メリーベルをヴァンパネラ一族に加えて後失い、今度は友人になったアランを仲間にと願ったエドガー。
だが一日で蘇生したメリーベルと違いアランはなかなか目覚めない。
エドガーは物思いにふけるばかり、というお話。
話を追うにつれ時間が経つにつれエドガーは以前のヴァンパネラになったことに思い悩むことはなくなり人を襲って血を吸うことには何のためらいもなくなっていく。
本作で物思いにふけるのはひとりでは寂しいからアランよ早く目覚めてくれという願いばかりなのだ。
アランが目覚めないのはペニーレインのせいではないかとエドガーは考える。
メリーベルも湿気に弱かったのだ。
その答えのように雨が上がり晴れた朝にアランは目を覚ますがそのままひとりで外へ出てしまいアランは最初の殺人を行う。
がその時に銃弾を受け再び昏倒。
またも小雨が降りだしアランの傷は癒えない。
エドガーは馬車で移動している貴族の一家を襲う。
夫婦の血を吸い終えた時中に小さな女の子がいるのに気づく。
アランはやっと目をさまし意識もはっきりとしてきた。
そしてエドガーが抱っこしている小さな女の子に気づく。
その子の名はリデルといいエドガーとアランは彼女を連れて旅をすることになる。
SFなどでもこうした「人間が別の存在になってしまう」物語は数多くあるけれどその変化の数日の心理と出来事を詳細に美しく描いた作品はあまりないのではなかろうか。
エドガーもアランも殺人に対する恐怖や反感はほとんどないと言っていい。
これは特別な存在(つまりマンガ家ということだけど)になることへの恐れや不安があった萩尾望都がもう揺るぎない作家になったという証なのかもしれない。