ガエル記

散策

『ポーの一族』「ユニコーン」(2016年、1958年、1975年、1963年)萩尾望都

『フラワーズ』2018年7月号 - 9月号、2019年5月号 - 6月号

1976年にロンドン、エヴァンズ家での火事でエドガーとアランが姿を消してから四十年経ち2016年にエドガーとファルカが再会する、というところから始まります。

そのための先に『春の夢』だったのでしょう。

つまりエドガーはアランが火の中に落ちた後ひとりだけで行動することはなかったのですね。

 

 

ネタバレします。

 

ファルカは「壁を通り抜けて思った場所に出られる能力の他に「鳥のネットワーク」を持っているという。

なんだかわくわくする展開だ。

そしてエドガーはずっとグールのような怪物の姿になっていたという。

さらにエドガーはアタッシェケースを出して「アランはここにいるよ」と言うのだ。

 

ここで「ダイモン」と呼ばれる男が登場してくる。

皆から嫌われているらしい。

さらにポーの一族であるシルバーが参入して小劇場が繰り広げられ。

エドガーは炭になったアランを生き返らせるのなら悪魔とだって契約する、と言い切りダイモンと共に行く。

ここでvol.1終わり。

 

続いてvol.2は1958年つまりアランが炭になる前の時間枠になる。

ここでエドガーとアランはファルカ及びダイモンとも交流している。

ベネチアでのコンサートが舞台となる。優れた歌手だった母親に対して劣等感を持つ娘ジュリエッタを中心として描かれていく。

そして男だけの一族とされるルチオ族の始祖シスターベルナドット。

 

vol.3

『春の夢』でおぞましかったクロエがなぜかシスター姿で登場。

死なずに生き延びシスターに成りすまして人間の生き血を吸って回っているのである。生存戦略たくましい。

エドガーはクロエからポーの村の話を聞く。

以前知った夢のような物語(あのグレンスミスの日記に書かれたような)とはまったく違うおぞましいヴァンパネラの実態が聞かされる。

エドガーがヴァンパネラやポーの村を嫌っている理由がわかる。

 

一方アランはダイモンことバリー・ツイストから誘われるが逃げていく。

 

 

vol.4カタコンベ

5年後再びアランはダイモン・ミューズ・バリー・ツイストに出会う。

バリーはアランを支配するかのようにカタコンベへと移動させる。

バリーには「強い敵がいる」という。そいつはオレを消したりはせず絞り取ってカラカラにしてカタコンベに放り込むのだ。

バリーは動けず干からびているが100年経つとどうやら回復し地上へ出てまた敵を見つけ戦いを挑みまた負けてカタコンベへ放り込まれてしまう。また美しい兄がいて千年閉じ込められているというのだ。

これを聞いたアランは「戦わず頼んでみたら」と答える。

バリーは「オレはあんな奴の奴隷にならない。絶対あいつに平伏したりしない」と叫んで消えた。

カタコンベで一人きり残されたアランは「ユニコーン」と叫んだ。

バリーは姿を見せる。

「すぐにぼくを戻せユニコーン

バリーはすぐにアランを元の場所に戻した。

アランはエドガーと住んでいる家に走って帰っていく。

 

ユニコーン」と呼ばれるとなぜか逆らえなくなってしまうことにバリーは思い悩む。

 

かつての『ポーの一族』よりアランの存在が強くなっている。

これも萩尾氏の変化のひとつかもしれない。

エドガーがアランなしでは生きていけなかったということをしみじみと感じさせられた。

そしてファルカもバリーもアランを欲しがっているのである。

ヴァンパネラになりながらも人間性を失わないことがアランの能力なのかもしれない。

 

ところで異種である『ポーの一族』が萩尾望都氏自身、つまり家族の中に馴染めない、マンガやSFが好きでいることなどが『ポーの一族』であるとするならそうであっても人間性を持ち続けているアランは「オタク世界」でも貴重な存在なのだ。